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手塚治虫「火の鳥」展に行ってきた

公開日: : 最終更新日:2025/04/23 トピック・展示 ,

手塚治虫「火の鳥」展

六本木ヒルズの東京シティビューで開催されている、『「火の鳥」展 ー火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命の象徴ー』を観に行って来た。

手塚治虫「火の鳥」展

手塚治虫「火の鳥」展、床面のコマ集

最初のブースのみ撮影可で、上部や目線だけでなく、床面にもマンガのコマがランダムに並べられていた。コマ単体の撮影は不可とされていたが、考えたなあと思った。

『火の鳥』は、過去と未来を行き来しつつ、現代に着地して完結するという壮大なドラマだが、手塚の死によって完結には至らなかった。生前に発表されたのは12編で、各編についてブースが設置され、それぞれに生原稿が展示されていた。手塚の死から30年以上経過しているが、丹念に配慮され保存されていたのだろう。

今更だが、画力が凄い。見開きページも多く、2ページの中にたくさんの人を描いていたり、仏像や銀河など、緻密かつ大胆な描写がこれでもかとばかりに繰り広げられる。『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』で、その後大成する漫画家がアシスタントとして背景を描いた、という話は聞いたことがある。『火の鳥』でも、そういうことはきっとあったのだろう。

過去の編はいずれも日本が舞台で、歴史上の人物とオリジナルキャラクターをうまく絡ませ、場合によっては史実とは異なる解釈を加えてストーリーが展開されている。時間の壁に閉じ込められた中で殺した相手が年を重ねた自分になっていたり、未来から来た女が歴史に干渉するなど、SF要素も見受けられる。

個人的には、未来を描いた編の方に圧倒される。獣人やロボットなど人間以外のキャラが登場したり、過激なテレビ番組を作るためにクローン人間に殺し合いをさせたり、種を残すためとはいえ近親での交わりが描かれたり、AI同士が核戦争を起こして世界を滅亡させたりする。どこまでも広がっていくアイディアが素晴らしく、そして時にはエグい。

『火の鳥』は、12編のうちいくつかはアニメ化されているが、尺の関係もあるのか短縮されたり改変されたりしている。原作は1度だけ読んだことがあるが、何度も繰り返して読まないと作品の本質には近づけないことを痛感した。

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