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ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(Noel Gallagher’s High Flying Birds)雑感

ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ (Noel Gallagher's High Flying Birds)

観ている最中からいろいろなことが脳内に浮かんだのだが、その最たるは「ノエルうまくやったなあ」だった。

名前や実績のあるバンドが解散した場合、そのあとに再始動するバンドやソロの多くは、「バンドとは異なる」あるいは「バンドの否定」でアプローチするはずだ。もう前のバンドじゃないんだよ、というメッセージが入っているわけだ。これは、恐らくロック界での暗黙のルールになっているのかもしれないし、リアムらのビーディ・アイもこれに則っている。しかし、ノエルの場合は少し違う。

まずソロアルバムだが、こちらはシンガーソングライター的なアプローチにしていた。コレは、脱退後のや、ストーン・ローゼズからシーホーセズを経てソロに至ったジョン・スクワイアに似た感触だ。去年のインタビューでの名を挙げていたが、偉大な先人として今回のソロ活動のヒントにしていたのかもしれない。

そしてライヴだが、セットリストの約半分にナンバーを導入。ソロアルバムだけでは持ち駒が少ないとはいえ、これはかなり大胆だ。そしてその内容もユニークで、自らがヴォーカルをとっていた曲はエレクトリック、リアムがヴォーカルだった曲はアコースティックとしている。後者はともかくとして、前者のセレクトがとても面白かった。

つまり、アルバムではオアシスではできなかったアプローチをし、ライヴではオアシス時代の必ずしも前面に出ることのなかった佳曲を再解釈した。これらにより、ノエルはオアシスを継承しつつもオアシスから解放され、自由になったのだと思う。自分がやりたいようにできて、かつてのオアシスもそのひとつという位置づけにしてしまっているのだ。

一方のビーディ・アイは、UKギターバンドのフォーマットの内にいて、オアシスを離れたようでいてオアシスから逃れられていない。多くのアーティストがそうだったように、以前のバンドを求められ、対比され続けるという、よりキツい状況の中にいるのだ。

クリスピアン・ミルズは解散後ジーヴァズを結成するも、結局行き詰まってクーラに出戻った。はソロ活動の中でスウェードを引きずっているし、観る側がスウェードを求めることを諦めさせることに成功していない。その反動が、ティアーズや再結成スウェードになっているのだろう。

ワタシは、2009年の夏の終わりの出来事を軽く見ていた。それは今でもさして変わっていないし、数年後には何事もなかったかのようにオアシスは再結成してステージに立っていると思っている。だって、イアン・ブラウンとジョン・スクワイアが和解するより、ノエルとリアムが和解することの方がはるかに優しいはずだからだ。

もしそうなったとしてても、今のノエルのスタンスならオアシスと並行してソロ活動ができる。一方のリアムはそうはいかないだろう。なので、「ノエルうまくやったなあ」と思うのだ。

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