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チャイルド44 森に消えた子供たち(ネタバレあり)

1953年、スターリン独裁政権下のソ連。理想国家がうたわれ、殺人は西側諸国による野蛮な行為で、ソ連では起こらないこととされていた。秘密警察MBGのレオは、親友の捜査官の息子の変死をきっかけに真相究明に乗り出すが、不当な容疑をかけられた妻ライーサを庇ったために、地方に左遷される。

左遷先の警察署長とは、当初そりが合わなかったレオ。しかしその地でも少年の殺人事件が起こり、署長にも小さい子供がいたことから、レオは真相究明の協力者にすることに成功する。一方モスクワの秘密警察は、かつてレオの部下だったワシーリーが。レオとライーサを追い詰めようとする。

原作は実際に起こった事件をもとに書かれた小説で、すこぶる評価が高い反面、ロシアでは発売禁止扱いになっているという。なので原作ファンも少なくなく、この映画はぶっちゃけあまり評判がよろしくない。原作にあった重要な要素、ウクライナ飢饉やレオの少年時代の描写などが、ばっさり落とされているそうだ。

しかし、原作を全く知らない身としては、大いに楽しませてもらった。『ドラゴン・タトゥーの女』に近い空気感があり、話が二転三転するスリリングな展開もいい。ラストでレオは秘密警察に返り咲くと、新しい部署の設立を上司に進言し承諾される。その部署が、ソ連のスパイ組織KGBになるわけだ。また、当初は愛のない結婚だったレオとライーサの絆も強まり、希望を見出だせる終わり方をしている。

キャストは、かなり豪華だ。レオを、ライーサを、左遷先の署長を、かつての部下でレオを追うワシーリーをジョエル・キナマン。監督は『デンジャラス・ラン』のダニエル・エスピノーサ、製作は大御所だ。

トム・ハーディは、現在『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が公開中だが、ここで駆使するのは銃器でもクルマでもなく、むしろ頭脳戦。肉体美を披露することもなく、性格俳優としてもやれることを証明している。ゲイリー・オールドマンとの共闘は、『ダークナイト・ライジング』のベインとゴードン警部を思い起こすととても興味深いし、クライマックスでのジョエル・キナマンとの対決は、ベインVSロボコップだ(笑)。

というわけで、機会があれば今度は原作にもチャレンジしてみようかと。

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