*

ARGYLLE/アーガイル(ネタバレ注意)

ARGYLLE/アーガイル

人気スパイ小説『アーガイル』を執筆する、作家のエリー・コーンウェイ。結末のアイディア出しのために父母がいる実家に列車で向かうが、車中で突然スパイ組織に襲われる。偶然を装い向かいに同席した男エイダンによって危機を脱し、ふたりで逃亡することに。

エイダンによると、彼女が狙われたのは、小説の内容が実際のスパイ組織ディビジョンの活動まんまだったからとのこと。しかし、エイダンの暗号を交えた通話を盗み聞きしたエリーは、殺されると思い込んで脱走。父母に助けを求めるが、実はふたりもディビジョンの高官だった。ふたたびエイダンがエリーを助け、彼女に真実を話す。

キックアス』『キングスマン』の監督作で、映像といい空気感といい、序盤からこの人らしさが全開だ。ただ本作は、小説の中の話と現実の話との関連というサスペンス要素も加わっている。二転三転する展開があって、個人的にはかなり楽しめた。

宣材ポスターでは、アーガイルが主人公、ディビジョンのラグランジが重要な役に見えてしまうが、これはミスリードだ。中盤で真実が明らかになり、状況が大きく逆転するが、それは観た人だけが楽しめるようになっている。思いきったとも言える一方、勿体ないとも言える。

エリーの本名はレイチェル・カイル、通称「Rガイル」で、彼女は無意識のうちに自分の名を小説の主人公の名前にしていた。彼女自身はCIAエージェントで、ディビジョンとの二重スパイでもあった。小説に書いたことは、彼女が実際に体験したことだった。ある任務で爆破に巻き込まれて記憶喪失になってしまい、記憶を戻させようとディビジョンの高官が彼女の父母になりすました。

というわけで、終盤ではレイチェルのスパイとしての能力が全開している。機銃の使いこなし、身体能力の高さ、エイダンとのコンビネーション。そして、極めつけはナイフを靴底につけて即席のスケート靴とし、コールタール上をすいすい滑りながら敵を撃退するシーンだ。

キャストは、エリー/レイチェルにブライス・ダラス・ハワード。『ジュラシック・ワールド』シリーズなどで観ているが、本作では(スタントも使っているとは思うが)痛快アクションもこなしていて、彼女にとっての代表作になりうると思う。

エイダンは、『月に囚われた男』での怪演が印象的なサム・ロックウェル。レイチェルとエイダンの上官アルフレッドは、。アーガイルは、ラグランジはデュア・リパだが、ふたりは小説のキャラにつき出番は少なく、宣材ポスターほどのインパクトは残していない。

劇中に流れる『Now And Then』が、かなり印象的だ。序盤にBGMとして流れたきりと思いきや、劇中何度も流れていた。特に、中盤でのレイチェルとエイダンとダンスシーンでは、「ナウ」がエリーからレイチェルに、「ゼン」がレイチェルからエリーに、それぞれシフトしたことを示しているように思えた。また、後半の銃撃シーンでは、レオナ・ルイスによるスノウ・パトロール『Run』が流れていた。

関連記事

L.A.ギャング・ストーリー(2013年)

1949年のロサンゼルス。マフィアのボス、ミッキー・コーエンとその巨大犯罪組織を撲滅するため

記事を読む

チャイルド44 森に消えた子供たち(ネタバレあり)

1953年、スターリン独裁政権下のソ連。理想国家がうたわれ、殺人は西側諸国による野蛮な行為で

記事を読む

アンタッチャブル(1987年)

1930年、禁酒法時代のシカゴ。アル・カポネは酒の密造で莫大な利益をあげ、市長も警察も買収し

記事を読む

ナイブズ・アウト

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(ネタバレ極力なし)

ニューヨーク。莫大な財産を保持していた、推理小説作家のハーラン。85歳の誕生パーティーの翌朝

記事を読む

J・エドガー(2012年)

老年のJ・エドガーは、部下に命じて回顧録を記述させる。若い頃司法省で働きながらFBIを設立さ

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑