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「キューブリックに魅せられた男」を観た

キューブリックに魅せられた男

に関わるドキュメンタリー映画だが、映画制作においてキューブリックに近かった人のドラマであり、それがキューブリックの人物像を映し出すことにもなっている。

俳優レオン・ヴィターリは、「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」を観て、キューブリックと仕事がしたいと思った。「バリー・リンドン」のオーディションに合格し、ライアン・オニール演じる主人公バリーの義理の息子役をこなした。休憩時間中にセリフを必死で覚えているさまを、キューブリックは見逃さなかった。脚本は書き換えられ、レオンの出番は増えてラストまで登場することとなった。

その後、レオンは俳優としてだけでなく、映画制作の技術も学んだ。やがて、キューブリックから「シャイニング」のダニー役の子供を一緒に探そうと声がかかると、全ての仕事をキャンセルして同行した。以降のキューブリック作品には、必ず制作者のひとりとして携わった。

アイズ・ワイド・シャット」では、仮面パーティーで赤マントの男をはじめ8役をこなしたそうだ。俳優のキャリアがある上、音響の調整やロケハンなどもこなすレオンは、当然のこと完璧主義のキューブリックから重宝された。レオンを知る関係者からは、いったいいつ寝ているのかと思われていた。レオンは自分の全てをキューブリックに捧げ、忠誠を尽くした。

キューブリックの死後、時代がフィルムからデジタルに移行するにつれ、レオンは作品のリマスタリング処理を手がけた。しかし、ロサンゼルスで開催されたキューブリック展はワーナー主導で進められ、レオンは携わることもなく、招待すらされなかった。しかし、レオンは求められれば展示会場に出向き、映画学校の学生らに解説することを厭わなかった。

キューブリック展は昨年ロンドンでも開催されていて、ゴールデンウイークにに行ったワタシはこの展示を観に行っていた。事前にネットで調べたときには、ロスの展示はさほど混まなかったとのことだったが、ロンドンの展示は混雑していて、チケットは数日前に売り切れていた。ワタシは日本で予約しておいたので入ることができたが、当日券狙いで来て諦めて帰った人を結構見た。キューブリックはアメリカ人だがロンドンに住んでいたので、人気があったのかもしれない。

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