ミューズ(Muse)『HAARP(CD+DVD)』
ミューズは、2007年にリニューアルされたロンドンウェンブリースタジアムにて演奏する、初のロックバンドの栄誉を与えられていて、その模様が収録されているのが『HAARP』だ。
公演は2日間に渡って行われ、初日がCDに、2日目がDVDに収められている。もちろんCDも聴きごたえはあるのだが、DVDの方が収録曲が多く、ステージセットやバンドのアクション、オーディエンスの様子など、よりライヴの生々しさを体感できる。
3人は、なんとアリーナ花道で下からせりあがるようにして姿をみせ、ステージに向かってゆっくり歩いていき、そして演奏がスタート。いきなりの『Knights Of Cydonia』で、早くも場内は大合唱となり、熱気は最高潮に達している。
バンドの3人とサポート1人の総勢4人だが、もっと大勢で演奏しているのではと思わせるくらい、音量と音圧の迫力がすごい。アリーナエリアはオールスタンディングで、めまぐるしく変わるカメラアングルにより、オーディエンスの歓喜に満ちた表情も適時拾われている。
時期的にはこのときの新譜『Black Holes And Revelations』に伴うツアーの一環ということもあり、このアルバムからの演奏が多い。マシューがアコギ弾き語りで歌う『Soldier’s Poem』は、今観るととても新鮮だ。また、『Invincible』など当時はアンセムの一端を担っていたはずだが、2013年の来日公演からは落ちていて、バンドが成長し続けていることを伺わせる。
このライヴは2007年6月で、まさにバンドがキャリア的に一段上の高みを目指し、メガバンドへの道をまっしぐらに突き進んでいた時期に合致していたと思う。がしかし、『Absolution』『Origin Of Symmetry』といったそれ以前からの曲も、ちゃんとスタジアム映えしている。メンバーチェンジや解散といったトラブルさえなければ、ミューズはこうなることを約束されたバンドだったのかもしれない。
因みに、この前年2006年はサマーソニックで来日してマリンステージのトリ前をこなし(トリはリンキン・パーク)、2007年3月にはStudio Coastや国際フォーラムなどで単独公演を行った。そして、ここに収録されているウェンブリー公演の1ヶ月後には、フジロックでトリ前を飾った(トリはキュアー)。
本国では2007年にこのライヴだが、日本でスタジアム/フェスのヘッドライナーを制するのを観るのは、2010年の武道館とフジロックまで待たなければならなかった。ただその一方で、バンドが成長していく過程を見届けてきたという喜びもある。
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