人間の証明(1977年)
赤坂の高層ビルエレベーターの中で、ナイフで胸を刺された黒人青年が倒れ、まもなく死亡。殺人事件として捜査が開始され、手がかりは青年が手にしていた西条八十の詩集と、死ぬ間際に言った「ストウハ」という謎のことばだった。捜査が進む中、青年の名前と素性が徐々に明らかになっていき、またファッションデザイナーとして大きな成功を収めている八杉恭子との接点が見え隠れするようになる。
舞台は東京だけに留まらずニューヨークにまで拡大し、そして最後は西条八十の詩集と青年と犯人とが結びつく地に行き着く。終戦後の混乱が生んだ悲劇が尾を引き、また青年殺害の犯人探しだけでなくいくつものサイドストーリーが同時進行していて、それらがいずれも関わりを持っているという展開も見事だ。
もうひとつの魅力は、豪華すぎるキャスティングである。八杉恭子には岡田茉莉子、黒人青年にはジョー山中、捜査の中心にいる棟居刑事には松田優作、八杉恭子の息子に岩城滉一、棟居の同僚にハナ肇、上司に鶴田浩二、といった辺りが主なキャスト。そしてこれだけには留まらず、八杉の夫で大物政治家には三船敏郎、刑事に鈴木瑞穂や峰岸徹、地井武男らの顔も見られ、他にも夏八木勲や長門裕之、竹下景子、坂口良子、大滝秀治などが出演。そして確か、ジョー山中演じる黒人青年の少年時代は、ジョー山中の子供が演じていたと聞いた気がする。
原作は森村誠一のベストセラーであり、この映画だけでなく何度もテレビドラマ化されている。がしかし、映像で「人間の証明」と言ったらやはりこの角川作品、という気がしている。角川映画の第2作として公開され(第1作は「犬神家の一族」)、「母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね~」という西条八十の詩は実際かなり流行った。
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