*

トゥール(Tool)@Kアリーナ横浜

公開日: : 最終更新日:2025/12/12 Tool

トゥール(Tool)@Kアリーナ横浜

撮影禁止、持ち込み禁止物の厳しさは、2007年の単独公演で体験済みだった。しかし、今回はA4サイズ以上の手荷物はNGという、更にシビアな通知がされていた。入場時には、手荷物の中だけでなく、金属探知機によるチェックもあった。

ほぼ定刻に客電が落ち、怒号のような歓声が湧く中、メイナード・ジェームス・キーナン以外の3人が先に登場してスタンバイ。最後にメイナードが姿を見せ、現時点の新譜『Fear Inoculum』のタイトル曲でスタート。バックドロップの巨大スクリーンには、トゥール独特の不気味にして美意識がある映像が流れる。

メイナードが、「ヨコハマァ」を計3度連呼し、オーディエンスを煽る。そして『The Grudge』となり、更に歓声のヴォリュームがあがる。個人的には、2001年フジロックのステージを思い出した。

メンバー配置は、向かって右にベースのジャスティン・チャンセラー、中央後方にドラムのダニー・ケアリー、左にギターのアダム・ジョーンズ。メイナードは、アダムの後方でドラムセットの横に陣取っている。ステージは基本的に暗めだが、メイナード以外の3人はだいたい見える。

サウンド的にまとめているのはダニーで、ほか3人はこの人にアイコンタクトをとることが多かった。上半身裸でプレイしているようにみえたが、実は進撃の巨人のようなボディスーツを身に着けていたと思う。ジャスティンのベースはリズムキープの枠を大きく超え、アダムのギターと渡り合っている。

アダムは『Fear Inoculum』ではフライングVを使っていたが、基本的にはレスポール・カスタムを弾いていた。エフェクターやプログラミングを駆使したり、トーキングモジュレーターを使っていたりと、プレイ面では頭ひとつ抜け出ていたように見えた。

メイナードは、例によって全く照明が当たらない。肉眼ではその姿を判別するのが難しいことが多く、双眼鏡を使って確認した。トゲトゲのモヒカンヘアで、スタンドマイクを軸のようにして歌い、曲によっては拡声器で歌っていた。楽譜立てがあったので、セットリストをつけていたのかもしれない。

トゥールの曲は大半が長尺で、間奏が長い曲も少なくない。それはアダムやジャスティン、ダニーの見せ場でもあるが、この間メイナードは何をしているのかと少し気になった。演奏に合わせて身体を前後に揺らしてノッていたり、しゃがんでいたりしたが、その場を離れることは決してなかった。ロバート・プラントがレッド・ツェッペリンの演奏中退屈していたという定説があるが、メイナードにはそういうことはないようだ。

セットリストは『Fear Inoculum』『10,000Days』の2作からを軸とし、大袈裟でなく全曲がクライマックスだ。曲間をある程度取っているのも、次への準備のためと納得がいく。バックの映像はほとんど全曲で流れていて、ビジュアルクリエイターの顔も持つアダムが強く関与していると思われる。トゥールはビデオシングルもいくつかリリースしているが、ここで流している映像も商品化してほしいものだ。

本編ラストを『Stinkfist』で締め、ジャスティンがエフェクターを駆使してノイズを発し、やがてスクリーンに12分からのカウントダウンが。この間トイレ等なので席を立つ人もいて、残り1分くらいになると再び場内がざわつき出す。

ダニーひとりが登場し、別のボディスーツ姿になってソロをはじめる。ドラムだけでなく、後方上部にあった電子鍵盤のような楽器も駆使していて、この人が生楽器のドラムだけでなくコンピューター面にも通じていることが伺えた。やがて3人も加わり、ブラック・サバスの『Hand of Doom』を。トゥールはオズフェストにも出演しているし、7月の「Back to the Beginning」にも参加していたので、納得だ。メイナードは、「R.I.P. Ozzy」と言っていた。

『Invincible』を経て、メイナードが「ヨコハマ」とか「See You soon」とか言い、オーラスは『Vicarious』。ふつうに考えれば充分ヘヴィーな曲だが、トゥールの曲の中ではポップな部類に聴こえた。終了後、ずっと奥の方にいたメイナードがステージ前方に躍り出て挨拶し、去っていった。ほか3人と、(恐らく)ダニーの娘さんふたりが並んで、挨拶してくれた。

セットリスト
Fear Inoculum
The Grudge
Disposition
H.
Rosetta Stoned
Crawl Away
Pneuma
Jambi
Stinkfist
アンコール
Chocolate Chip Trip
Hand of Doom(Black Sabbath)
Invincible
Vicarious

完売とはいかなかったが、それでも場内は8割くらいの入りにはなっていたと思う。オーディエンスのリアクションも上々で、コアなファンが集まったと思われる。日本にトゥールのファンはこんなにいたのかと驚かされる反面、これだけファンがいるのであれば、次の来日は10年以上は空かないのではないだろうか。

関連記事

トゥール(Tool)、18年ぶり単独来日

アメリカのヘヴィーロックバンド、トゥールが来日公演を行う。来日は、2013年のオズフェスト以

記事を読む

トゥール(Tool)『Vicarious』

トゥールのビデオシングル、『Schism』『Parabola』は外盤リリースの約1年後に日本

記事を読む

トゥール(Tool)『Salival(CD+DVD)』

トゥールの『Salival』というCDプラスDVDのパッケージがある。『Lateralus』

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑