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フランケンシュタイン(1994年)

フランケンシュタイン(1994年)

18世紀後半。船で北極を目指す探検隊が、瀕死の男を救出。その男ヴィクター・フランケンシュタインは、船長のウォルトンに自らの半生となぜ自分がここにいるかを語り出す。フランケンシュタインは大学で生命を創造する研究に明け暮れていて、縫い合わせた死体に刺激を与えることでついに死体は甦るが、その醜い容姿を目の当たりにして自分がしたことに恐怖し、逃げ出してしまう。

クリーチャー(甦った死体)は、その怪力と容姿ゆえに怪物扱いされて人々に嫌われ憎まれるが、自分を恐れない盲目の老人とは心を通わせる。しかし老人の家族によって追い払われてしまい、次に老人の家に行ったときはもう一家は引っ越していた。クリーチャーは自分が着ていたコートに入っていたフランケンシュタインの日記を読み、そこに記されていたのが自分だと気づく。生み出しておきながら捨てたことを恨み、復讐のためフランケンシュタインを追いかける。

フランケンシュタインはクリーチャーではなく、生み出した博士の名前だ。クリーチャーは便宜的な呼び名で、つまり名前すらない。何度か映画化されている作品だが、ここでは頭部にボルトが埋め込まれた従来のクリーチャー像ではなく、コートで極力全身や容姿を隠し、時折見える縫い目が生々しい以外は、むしろ人間にごく近いイメージになっている。

製作、監督およびフランケンシュタインを、クリーチャーを、フランケンシュタインの幼馴染みで婚約者エリザベスをヘレナ・ボナム・カーターというのが、主なキャストだ。ケネス・ブラナーとデ・ニーロのダブル主演のように一見思えるが、作中最も気を吐いているのはへレナ・ボナム・カーターだと思う。

エリザベスはフランケンシュタインと結婚するも、クリーチャーの復讐により殺されてしまう。フランケンシュタインは彼女の首を侍女の死体につなぎ合わせて女クリーチャーとして復活させるが、彼女は自身の容姿を見て嘆き、自ら炎を放ってしまう。今ではすっかり悪女のイメージが定着したヘレナだが、ここでは入魂の演技で一途な美少女エリザベスと醜悪になってしまった女クリーチャーをこなし、作品を引き締めている。

フランケンシュタインはマッドサイエンティストの元祖とされ、クリーチャーはアンドロイドやサイボーグといったSFの人造人間のルーツ的存在とされる。が、その根底にあるのは、悲しく切ないラヴストーリーだ。フランケンシュタインとエリザベス、フランケンシュタインに自分のパートナーを作ることを求めたクリーチャー。そして、クリーチャーとフランケンシュタインとの、創造主とその子との間にある、屈折した愛憎だ。

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