愛の嵐(1973年)
1957年のウィーン。ホテルのフロント係兼ポーターとして働くマックスは、宿泊客として訪れた夫妻の女性ルチアを見て困惑する。マックスは戦時中はナチス親衛隊の将校で、彼女は当時強制収容所で弄んだユダヤ人の少女だったからだ。ルチアもまた、マックスを見て困惑していた。
元ナチス将校の面々は、残党狩りから逃れるため、証拠の抹消や証人の抹殺などをおこなっていた。一方ルチアは出発日になってもホテルに残り、夫を先に行かせていた。マックスは彼女の部屋へ行き、自分を脅すつもりかと詰めかけて殴りつける。がしかし、やがてふたりは当時のことを思い出し、情念を絡め合う。
作品自体は今回が初見だが、あまりにも象徴的な宣材写真だけは何度も見かけていた。ナチス帽をかぶり、トップレスにサスペンダー姿は衝撃的で、今や作品を飛び越えてひとり歩きしている感がある。
物語は、劇中の現在にあたる1957年と戦時中とが交互に切り替わって進行する。大人になったルチアはロングヘアだが、戦時中はショートで、60年代のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせる。上記のルチアの姿のシーンは、時間的には1、2分とほんのわずかだ。
戦時中、マックスとナチス将校たちは、まるで人形のようにルチアを扱っていた。ルチアとしては抗う選択肢はなく、従うよりほかなかったと思われる。ルチアにとっては思い出したくもない忌まわしい記憶、かと思いきや、マックスとの再会後は主導権を握り、振り回している。この方向に行くことが驚きだが、だからこそ本作が観る人に刺さったのだろう。
マックスのダーク・ボガードは、1999年に亡くなっている。ルチアのシャーロット・ランブリングは、現在も女優として活動中。ワタシが観たことのある作品だと、『エンゼル・ハート』『氷の微笑2』『アサシン・クリード』『レッド・スパロー』『デューン』に出演していた。
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