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ザ・ブラック・クロウズ(The Black Crowes Present : $hake Your Money Maker)@立川ステージガーデン

公開日: : 最終更新日:2022/11/06 The Black Crowes

ザ・ブラック・クロウズ(The Black Crowes Present : $hake Your Money Maker)@立川ステージガーデン

クリス・ロビンソンは、2004年のにソロで来日。リッチ・ロビンソンとスヴェン・パイピーンは、ザ・マグパイ・サルートとして2019年に来日している。そしてでとなると、2005年以来、実に17年振りの来日だ。今回は、ファーストアルバム『Shake Your Money Maker』30周年記念ツアーとなっている。

さて、東京公演にはオープニングアクトがブッキングされている。リフの惑星という、日本人4人組だ。音楽的にはクロウズとの関連は薄いが、バンドの演奏力はかなり高い。特に、両サイドのギターとベースのリフが双方とも際立っていて、耳に残る。後方に陣取るドラマーも上手い。『Helter Skelter』のカヴァーでは、ギターソロで『Fuckin' In The Bushes』のリフを組み込んでいたように聴こえたが、気のせいかな。

セットチェンジを経て場内が暗転し、ジェームズ・ブラウン『Sex Machine』をSEにしてクロウズの面々が登場。まだステージが暗い中、リッチが『Twice As Hard』のリフを弾いてライヴがスタート。と同時にステージが明るくなり、クリスがスタンドマイクを振り回して歌い始めた。これだけでシビれた。

ステージ前方中央にクリス、その向かって右にリッチ。リッチはがっちりした体格になっていて、貫禄もたっぷり。一方のクリスは、風貌こそ歳を感じさせるが、体型は保ち、そして声質も変わっていない。ブルーのミリタリージャケットに黒のハット姿が、既に雰囲気を出している。カッコいい、この人はなんてカッコいいんだ。

クリスの向かって左後方には、ベースのスヴェン。ロビンソン兄弟の盟友だ。この人は、クリス以上に細身だった。その左にはギターのアイザイア・ミッチェル、後方中央にはドラムのブライアン・グリフィン、その向かって右にはキーボードのジョエル・ロビナウ。そして、向かって左奥には女性コーラスがふたり陣取っている。バックドロップには、クロウズのロゴが掲げられていた。

バンドは、アルバム『Shake Your Money Maker』を、曲順もそのままに演奏する。クリスはMCもこなしつつ、ステージを右に左にと足を進め、フロントマンとしての役割を充分すぎるほど果たしている。驚いたのはギターの割り振りで、主だったリフはリッチが、間奏のソロはアイザイアが担うことがほとんどだった。アイザイアはかなり重要な役を務め、そして決めるべきところはリッチが決めていた。ふたりは、ほぼ1曲毎にギターを替えていた。

ステージ前方には、スタンドマイクが3本横一列にセットされていて、曲によってはスヴェンとアイザイアもコーラスに加わっていた。右端はリッチで、時折クリスとのユニゾンになったり、ふたりで1本のマイクで歌ったりした。ロックバンドでは珍しくないショットだが、これが実の兄弟でとなると、現在ではほぼ皆無ではないだろうか。クロウズは21世紀になってから活動休止と再開を繰り返しているが、2015年にはついにふたりが決裂してしまい、解散が表明されてしまった。そのふたりが再び同じステージに立っていることに、感動せずにはいられない。

中盤にはオーティス・レディングのカヴァーでバンドが躍り出る足掛かりとなった『Hard To Handle』が披露され、アルバム最終曲の『Stare It Cold』が終わったとき、じわじわと感動が沸き上がってきた。アルバム全曲ライヴはほかのアーティストでも何度か体験しているが、このゴールに到達した感は何度味わってもたまらない。

続けて『Sometimes Salvation』『Soul Singing』と、ブルージーでソウルフルなナンバーで攻め立てる。派手さやキャッチーさはないが、どの曲も中盤以降がいつ終わるとも知れないジャムセッションの様相を呈していて、1曲1曲がクライマックスのような空気になる。この感覚を味わうのは、ずいぶん久しぶりだ。バンドは高いレベルの演奏をこなしつつも遊びがあって、スタンドマイクを華麗に操るクリスを、後方のジョエルとブライアンが笑いながら視線を送っていたのが印象的だった。

本編ラストは、必殺の『Remedy』。そしてアンコールだが、今回のツアーでは日替わりでカヴァー曲が演奏されている。さて何が来るかと思っていたら、クリスの「One more rock'n roll song !」というMCを経て、の『Rocks Off』となった。クリスは、キーをはずしながら(笑)それでも強引にそしてエモーショナルに歌っていた。

セットリスト
『Shake Your Money Maker』全曲演奏
Twice as Hard
Jealous Again
Sister Luck
Could I've Been So Blind
Seeing Things
Hard to Handle
Thick n' Thin
She Talks to Angels
Struttin' Blues
Stare It Cold

Sometimes Salvation
Soul Singing
Wiser Time
Thorn in My Pride
Remedy

アンコール
Rocks Off

ブラック・クロウズの最大の魅力は、トラディショナルな空気感を備えていることだと思っている。彼らがデビューする前の年代ならばメインストリームを華やかに疾走するところだが、90年代はオルタナティブの潮流で、彼らのストレートでブルージーなスタイルはむしろ異端だったはずだ。それが30年が経ち、潮流が一周も二周もして、彼らの音は普遍性を帯び、彼ら自身は時代を超えた存在になりつつある。

個人的には1999年フジロック以来のクロウズのライヴだったが、いろいろあったクロウズが今も活動し、そして日本の地を再び踏んでくれたことに、とてもとても感謝している。

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