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頭脳警察『Live Document 1972-1975』

公開日: : 頭脳警察/PANTA ,

頭脳警察『Live Document 1972-1975』

が2004年にリリースした、ライブボックスを聴いた。CD7枚組プラスDVDという、とてつもないヴォリュームになっている。

ディスク1~7は、各地のライブ音源だ。東京と地方、72年から75年と、うまくちりばめられている。音質は、はっきり言ってあまりよくはない。こもっていたり、レベルが上がったり下がったりで、イヤホンで聴くと面食らうこともしばしば。しかし、スタジオアルバムでは伺い知ることのできない生々しさと荒々しさが体感でき、世代的に70年代の頭脳警察をリアルタイムで享受することの叶わなかった身としては、聴いていてぞくぞくする瞬間がいくつもある。

ディスク1は1972年8月の日比谷野音公演で、ファーストが発禁になり、セカンドも発売後1ヶ月で発禁になったのを受けている。のMCでもそれが触れられていて、出るかどうかわからないアルバム(サード)から、という曲紹介もしている。

ディスク2、3は、1973年の鈴木兄弟がメンバーだった4人編成期の音源。2人の在籍はわずか2ヶ月ほどで、スタジオレコーディングのアルバムには参加していない。ディスク2は白樺湖でのフェスティバルだが、荒天のため演奏時間短縮を強いられたものの、観客のおさまりがつかず、PANTAがひとり出てきて『それでもお前は』を歌う。音で聴いていると混乱していてよくわからないが、ブックレットの補足が絶妙だ。

ディスク4、5は、悲露詩がベーシストとして在籍したトリオ編成期で、1974年の音源。だててんりゅうを経て加入した悲露詩は、頭脳警察ではPANTA以外にリードヴォーカルを許された唯一のメンバーだった。ここでも、『コミック雑誌なんかいらない』において、PANTAが呼び出して悲露詩が持ち歌を歌い、また『コミック~』に戻っていくという、ちょっと考えられないステージが実現している。

ディスク6、7は、1975年つまり頭脳警察が解散した年の音源。個人的に石塚はパーカッションのイメージが強いが、実はディスク1~5ではドラムを担っていた。しかし、この年ドラマーを含む5人編成になったことで、パーカッションに復帰している。90年の再結成、2001年の再々結成でも5人編成だったので、その原型が垣間見られる。

DVDは、ディスク6の長野県の伊那市市民会館公演を主催者が8ミリで撮影していたもの。なんとか視聴に耐えうると判断された映像を編集し、全6曲で12分弱という内容になっている。完奏はなく断片ばかりで、ふつうに考えれば物足りない物量だ。しかし、1975年の解散直前の頭脳警察のライブを垣間見れるとあっては、やはり貴重だ。何せ、石塚が椅子に座らず立ってパーカッション演奏をしてるし。

ブックレットも読み応えがある。当時コンサートスタッフとして頭脳警察のライブに立ち会った人による、各ディスクの解説や当時のバンドの状況などが記され、読みながら改めて音を聴く楽しみ方もできる。詳細な年表は、バンドだけでなく対バンしたアーティストも記されている。四人囃子との共演が多いのは、事務所が同じだからかな。

当時活動していたプロモーターへのインタビューは、日本のロック事情が垣間見られるようでとても興味深い。スタッフがアルバイトで稼いだお金を運営に充てていたとか、アーティスト側にもガソリン代くらいしか出せないことを伝え、しかし当時はライブハウスも少なかったから演奏する場があることがアーティストにはありがたかったとか、すごい時代だなと思ってしまう。

そして、ディスク6の長野公演の主催者(つまりDVDの映像を撮っていた人)のインタビューが感動的だ。動機は情熱だけという見出しで、当時長野にロックバンドが来ることも稀、来たとしても長野市や松本市がいいところとのこと(会場は伊那市)。地元のレコード店やロック喫茶の人にコンサートを開催したい意思があることを伝え、口コミで広まった。スタッフには高校生や中学生の少年もいたとか。なんというか、すごいエネルギーだ。

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