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『フォロウィング』25周年/HDレストア版を観た

『フォロウィング』25周年/HDレストア版

作家志望のジムは、街中を歩く不特定の人を尾行することを趣味のようにしていた。あるとき、尾行していた男の方からジムに接触。男の名はコッブといい、持っていたカバンの中身は空き巣をして手に入れた盗品だった。コッブはジムに共犯を持ちかけ、ジムは戸惑いながらも行動を共にしてしまう。

スーツ姿の男が、バーで金髪の女性に話しかける。やがてふたりは親しい仲になり、男は彼女の自宅にも出入りするようになるが、そこにはコッブとジムが以前空き巣に入っていた。女はバーのオーナーに弱みを握られていると言い、店の金庫に入っている自分の写真を取り返すことを男に依頼する。

監督の長編デビュー作で、1998年に公開。自主制作と思われ低予算感が出ているものの、後の作品で使っている手法がいくつも垣間見え、デビュー作にしてこの構想をしたためていたのかと唸らされる。

全編モノクロ。そして、劇中の時間軸が行ったり来たりする展開に、最初のうちは何が起こっているのだろうと撹乱させられる。ストーリーが進行するうちに、ああそういうことかとだんだんわかってくる仕組みだ。

メメント』や『オッペンハイマー』では、カラーとモノクロを時間軸にリンクさせて明確に使い分けているので場面転換の区別がつくが、本作ではストーリーを追うことでしか判別ができない。なので、一層作品に引き込まれる。

金髪の女性に接触する男は、実はジムだった。風貌も格好もまるで異なると思いつつ、もしかしてと思っていた。空き巣を続ける中で顔バレしたことに怯えるジムに、コッブは身なりを変えるようにと言う。ジムは長髪を切ってヒゲも剃り、ラブないでたちからスーツに替えていた(実は、これもコッブの策略のうち)。

「仕掛け」は上記のみにとどまらず、展開は文字通り二転三転する。そして、ラストは冒頭につながってくるという、見事な伏線回収にもなっている。

心理的に追い込まれるかのような音楽も、かなり効果的だった。誰が担当だろうと観終わった後に確認したが、デヴィッド・ジュリアンという人だった。『メメント』『インソムニア』『プレステージ』と、初期ノーラン作品で音楽を担当している人だった。

本作の2年後、ノーランは『メメント』で鮮烈なインパクトを残し、以降ハリウッドに進出する。

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