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ミュー(Mew)@ザ・ガーデンホール Frengers 15th Anniversary Celebration Tour

公開日: : 最終更新日:2023/10/13 Mew

ミュー(Mew)@ザ・ガーデンホール Frengers 15th Anniversary Celebration Tour

ミューが世界デビューを果たしたのが、2003年リリースのアルバム『Frengers』でのこと。今年はリリース15周年にあたり、全曲再現ライヴを行うツアーを実施中だ。ここ日本にも来てくれ、東京公演はその初日だった。

予定から5分ほど過ぎたところで客電が落ち、ステージ向かって右の袖からメンバー登場。ギターとドラムのヘヴィーなリフの『Repeaterbeater』は、オープニングとしては意外だ。演奏が先に始まり、最後にヴォーカルのヨーナスが加わってスタート。そして曲間を切らさず『Special』となり、終盤でバックドロップのスクリーンが稼動。映像が流れ始めた。

現在のメンバーはヨーナス、ベースのヨハン、ドラムのスィラスの3人で、サポートにギターとキーボードが入っている。ワタシはステージ向かって左前方に陣取っていて、サポートメンバー側だった。キーボードの人は長髪で存在感があり、またオーディエンスに手拍子を求めるなどしていた。ギターの人はエフェクターをストラップに取り付けていて、ストラトキャスター1本で全ての曲を弾いていた。5人全員黒の服装で、ヨーナスはサルエルパンツを履いていた。

2部構成であることは事前にアナウンスされていたが、1部の方が通常セットになっていた。いや、通常と言いながらキャリア総括のベストヒットではなく、もっかの新譜『Visuals』からは『Candy Pieces All Smeared Out』1曲のみ、そしてセカンド『And The Glass Handed Kites』からのセレクトが多いという構成に。『Frengers』に寄り添い、バンドが世界展開した初期を重視したという意味合いかな。ベストアルバム『Eggs Are Funny』のみに収録の『King Christian』が聴けたのは貴重だった。『Louise Louisa』では、終盤になるとメンバーが捌けてヨーナスとキーボードの人だけになり、音数を絞ったシンプルなアレンジでヨーナスは歌い上げた。

約10分のインターバルを経て、いよいよ『Frengers』全曲再現ライヴだ。先にバックドロップのスクリーンに映像が映る中、メンバーが登場。ヨーナスもテレキャスターを抱えていて、スィラスとアイコンタクトをとった後に『Am I Wry? No』へ。永遠不滅のアンセムは、15年を経た今なお輝きを失っていない。そのまま立て続けに『156』へ。ここではスィラス以外の3人がコーラスを担い、バンド一丸となって『Frengers』をやり切るんだという、彼らの決意表明のようにも受け取れた。ラストは、原曲では「ワン、ファイヴ、シックス」という歌詞で締めくくるのだが、ここでは演奏で締めていた。

ヨーナスも、そしてヨハンもMCで、このアルバムがリリースされて15年が経つことや、バンドがはじめて日本に来たのも同じく15年前で、といったようなことを言っていた。『Symmetry』は、原曲では女性ヴォーカルとヨーナスとのユニゾンなのだが、ここでは女性ヴォーカルを映像で担い、それにヨーナスはじめバンドが合わせていた。最初に「Becky Jarrett」と彼女の名前が出ていて、とても可愛い素敵な女性だった。このコ今どうしてるんだろ?

ステージアクションとしては、ヨハンが最もアクティヴで、何度もステージ前方ににじり寄ったり、ギターの人のところまで来てベースのボディを近づけて弾いたり、後方ひな壇のドラムセットの脇に立ったりしていた。この人がバンドに復帰して、ほんとうによかったと思う。また第2部では、キーボードの人も曲によりギターを手にして弾いていた。スィラスは、ワタシのところからはドラムセットに埋もれてその姿はよく見えなかったが、メリハリの効いたビートはバンドの屋台骨になっているのだと感じた。ヨーナスはだいたいハンドマイクで歌っているが、イアン・ブラウンばりに持つ位置が高い。そして第2部では、自らギターを弾くことが多かった。

バックに流れる映像は、その大半がPVの流用だったと思う。コンセプトは大きく2つあると思っていて、ひとつはグロさと可愛さの狭間を突いたセンスだ。頭部だけ動物で首から下が人体になっていてバイオリンを弾いていたり、目だけ人間だったり、と、今までも見てきているが慣れそうで慣れない(笑)。もうひとつは、宇宙空間や星空に光る流星や勢いよくはじけるマグマなど、人類の力及ばぬ壮大な自然のスケールで、特に静から動に転じるときの起爆する瞬間とのシンクロが素晴らしい。また、時折演奏している5人のシルエットが映像にかぶさることがあって、それもカッコよかった。

バンドは、アルバムの通りに再現するというより、今の自分たちでできる演奏を目指しているように見えた。演奏は原曲よりも幾分ラウドで、それがライヴとしての生々しさを感じさせた。第2部だけで何度もピークを迎えたが、『She Spider』でもそれが来た。そしてステージはギターとヨーナスの2人だけになり、『Comforting Sounds』を。先ほどまでの熱さがうそのように場内が静まり返る中、ギターのリフに合わせてヨーナスが歌い上げる。前半のヴォーカル部が終わったところで他のメンバーが合流し、フルバンドモードになって後半部の普遍的なメロディーを淡々と演奏していた。そして演奏が終わり、5人がステージ前に揃って挨拶。場内は、多幸感に満たされた。

セットリスト
第1部
Repeaterbeater
Special
The Zookeeper’s Boy
Satellites
Candy Pieces All Smeared Out
King Christian
Apocalypso / Saviours Of Jazz Ballet
Louise Louisa

第2部『Frengers』全曲再現
Am I Wry? No
156
Snow Brigade
Symmetry
Behind the Drapes
Her Voice Is Beyond Her Years
Eight Flew Over, One Was Destroyed
She Came Home for Christmas
She Spider
Comforting Sounds

当たり前だが、アルバム15周年アニヴァーサリーツアーをするということは、15年間活動し続けなくてはできないことだ。『Frengers』が世に出たのは、2003年。その前後にデビューした「同期生」で、今も活動を続けているバンドは、いったいどれだけいるだろう。ヒット曲が呪縛になって行き詰ったり、クリエイティヴィティが枯渇したり、そうして解散してしまったバンドは少なくない。下手をすれば、この15年の間に解散して再結成しているバンドだっている。そんな中、ミューはメンバーチェンジこそ激しいが、解散はせず、常に続けるという選択肢を取ってきた。そんな彼らを誇らしく思うし、今後も彼らの活動を見続けていきたいと思う。

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