サウンドウォーク・コレクティヴ&パティ・スミス(Soundwalk Collective & Patti Smith)@新国立劇場 オペラパレス
芸術集団サウンドウォーク・コレクティヴ(以下サウンドウォーク)とのコラボレーションで来日したパティ・スミス。会場は、新国立劇場オペラハウスだ。
開演時間を10分ほど過ぎたところで場内が暗転し、パティとサウンドウォークの4名が姿を見せた。パティは早速1945年広島のことを話し、そのままチェルノブイリの原発事故をテーマにしたポエトリー・リーディングがスタート。
パティはステージ前方中央に立ち、楽譜立てに置いた詩のノートを読み上げる。後方では、鉄琴や銅鑼など複数のパーカッション、チェロ、そして映像や音響をコントロールすると思われる機器を、サウンドウォークの面々が担っていた。
バックドロップの巨大スクリーンには映像が流れる。人々を捉えた記録映像のようなものやアブストラクトな表現、映画のいち場面の引用など。スクリーンの両サイドには、パティの詩の日本語字幕が表示される。このような具合で、視線はパティ、サウンドウォーク、映像、訳詩を目まぐるしく追いかけ続けることに。
サウンドウォークは、音響や映像などアート全般に渡る芸術集団で、パティは特にここ数年彼らとコラボレートした作品を発表していた。彼らは電子機器と生楽器の双方を駆使していたが、氷のかたまりをピックで削り、その音をマイクで拾って音響の一部にしていた。チェロの女性も、弦を指で弾いてビートにするなど、多才な人たちだ。
パティのリーディングは心なしかゆっくりめで、英語のワードをワタシたちにも聴き取りやすくしてくれている気がした。常に淡々としているわけではなく、時に身ぶり手ぶりを加え、ことばだけでなく身体全体で表現しているように思えた。終盤には、彼女の情熱がどんどん加速していき、観る側も引き込まれていく。それが最高潮に達したところで、本編が終了した。
アンコールに登場したのは、パティと、彼女の娘ジェシー・パリス・スミスだ。ジェシーのピアノで、パティは『Wing』『Peaceable Kingdom』を歌いあげる。後者のアウトロでは、『People Have The Power』を別アレンジで届けてくれた。
パティの前回来日公演は、2016年のフィリップ・グラスとのコラボレートで、趣向としては今回に通ずるものがあったと思っている。どちらも、ロックアーティストであり詩人でもある彼女だからこそ、成立したのではないかと思う。この二面性は、ほぼほぼ彼女だけが持ちうる二面性ではないだろうか。
今回は早めに日本入りし、太宰治や小津安二郎の墓参りをしたり、広島で被爆を経験した方と対談したりしていて、その様子は彼女のインスタグラムに逐次公開されていた。かなりのキャリアを重ねている人だが、引退はおろか依然として精力的に活動を続けている。そのPowerを受け取ったワタシたちも、何かをしなくてはと思わされる。
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