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フィリップ・K・ディック『アジャストメント』

フィリップ・K・ディック『アジャストメント』

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』が『ブレードランナー』として映画化されているのをはじめ、作品が多数映画化されているSF作家、主演で『アジャストメント』が公開され、劇場まで観に行ったこともあり、その原作を収録した短編集を入手した。

『アジャストメント』は、映画から入るとその違いにかなり面食らう。人間の運命を司る調整局と、その存在を偶然知ってしまった男という基本設定は同じだが、原作は男の葛藤だけに留まっている。むしろ、映画の脚本が原作を上手に膨らませたと見るべきだろうか。

『ウーブ身重く横たわる』は、ディックのデビュー作。『さよなら、ヴィンセント』は、初訳とのことだがわずか8ページしかない。個人的に面白いと思ったのは、互いに数時間だけ相手方の体質になる人間と異星人との結婚とその後を描いた、『おお! ブローベルとなりて』。『凍った旅』では主人公がタイムマシンで過去に飛び、後に傑作を発表する作家にそのヒントを与えんとする。

ラストが『人間とアンドロイドと機械』という、小説ではなくスピーチ原稿。痛快な文体とほどよいテンポで読みやすい小説とは大きく異なり、非常に難解。1回読んだだけでは理解ができず、また読み直す必要がある。しかし、ディックが作品に注ぐ世界観が存分に語られているように思え、興味深い。

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