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ボブ・ディラン(Bob Dylan)@Zepp Divercity 2014年4月4日

公開日: : 最終更新日:2023/02/12 ライヴ

ボブ・ディラン(Bob Dylan)@Zepp Divercity 2014年4月4日

来日4公演目にして、ワタシにとっての今回1回目の公演だ。開演10分前に到着し、1階フロアがブロック分けされていることを思い出す。Aブロックのステージ向かって左中程に陣取って、そのときが来るのを待った。

予定より7分近く経ったところで客電が落ちたかと思うと、まだ真っ暗なステージにアコースティックギターのリフが響き、早くも意表を突かれる。この人のライヴでは、開演時に必ず「Ladies and Gentlemen…」というアナウンスのSEがあるはずなのだが、なのに今回それがなかったからだ。

結構ハード目なリフが続く中、メンバーがそれぞれ配置につく。そして、最後にその人が登場し、そのまま歌い始める。前3公演の情報とメロディーラインから、なんとなく「あの曲」と思いはしたが、サビに来るまで確信が持てなかった。去年からほとんどオープニングを飾っている『Things Have Changed』だと。

続く『She Belongs To Me』も、これまたアレンジや歌い回しを変えまくり。原曲の原型をとどめないほどに変えてしまうのは最早この人の専売特許だが、にしても相変わらずやってくれる。それまではマイクスタンド前に立って歌っていたディランだが、『Beyond Here Lies Nothin'』からピアノ前にポジションを移し、立って弾きながら歌い上げている。

今回、バンドメンバーは5人。向かって左から右へ、大柄ギタリストのスチュ・キンボール、ベースのトニー・ガーニエ、ドラムのジョージ・リセリ、リードギターのチャーリー・セクストン、ペダルスティールのドニー・ヘロン、という配置だ。全員がダークブラウンっぽいスーツを着ている。

そしてディランだが、白のスーツに白のハット(カクテル光線の当たり具合で白に見えるが、実際はクリーム色とかかも)。他のメンバーの立ち位置はまず変わらないが、ディランだけは歌うときは中央、ピアノを弾くときは向かって右に移動、という具合だ。

恐らく最新シングルの『Duquesne Whistle』を経て、ここでブッ込んできた。前3公演でやってない曲という判別だけがその場でかろうじてできたが、終演後に調べて『Huck's Tune』という曲だとわかった。この曲、オリジナルアルバム未収録で、ブートレッグシリーズの『Tell Tale Signs』から。それにしても、すごいところを突いてくる。

何度となくメロディーが繰り返される、ディラン節炸裂の『Tangled Up In Blue』、グラミーも受賞しこの人の代表曲の末端に位置するであろう『Love Sick』は、前半のハイライトになった。歌い回しはやはり原曲から変えているが、これらはまだ原型をとどめている。ここまでが第1部で、この後約20分のインターバルが入った。

そして第2部だ。『High Water (For Charley Patton)』で勢いよくスタートし、70年代の佳曲『Simple Twist Of Fate』を経て、いよいよ「現在進行形」ディランワールドが繰り広げられる。曲は『Modern Times』『Together Through Life』そして最新作『Tempest』からで、大御所にしてベストヒットに執着しない姿勢は、この人にしかできない。まさに、先駆者にして異端だ。

バンドを牽引しているのは、いったい誰か。1部でも2部でも出だしでリフをかきならしたスチュのように一見見えるが、引っ張っているのはやはりディランだ。特にピアノを弾きながら歌うとき、メンバー5人はみなディランに視線をやり、ちょっとの動きさえ逃すまいとしていた。そんなことを知ってか知らずか、当の本人はとっても自由で、気持ちよく鍵盤を操っている。

第2部ラストの『Long And Wasted Years』は、これまた異様とも言える盛り上がりぶりを見せた。21世紀にリリースされたアルバムは、どれもトラディショナルに根差していて、ロックを聴き続けてきた身としてはすんなりとは入ってきにくい。それなのに、生演奏を体感していると、温かさに包まれたような幸福感に浸ることができるのだ。伝統的でありながら新しい、そんな音を鳴らしているからだろう。

アンコールにきて、やっとというか、この人の定番ソングが2連発。『All Along The Watchtower』『Blowin' In The Wind』だが、やはりアレンジと歌い回しが異なり、まさにこの日このときだけの歌を、この人は歌っていた。全てが終わり、ジョージはドラムセットにて起立し、他のメンバーはステージ前方に出てディランを囲む。ディラン、ドヤ顔でしばしフロアを見渡し、その間拍手は鳴りやまなかった。

セットリスト
1.Things Have Changed
2.She Belongs To Me
3.Beyond Here Lies Nothin'
4.Waiting For You
5.Duquesne Whistle
6.Huck's Tune
7.Pay In Blood
8.Tangled Up In Blue
9.Love Sick
(Intermission)
10.High Water (For Charley Patton)
11.Simple Twist Of Fate
12.Early Roman Kings
13.Forgetful Heart
14.Spirit On The Water
15.Scarlet Town
16.Soon After Midnight
17.Long And Wasted Years
(encore)
18.All Along The Watchtower
19.Blowin' In The Wind

ベストヒットの少ない構成は、今回が初ディランという人にとっては少し敷居が高かったかもしれない(ワタシが94年に武道館ではじめて観たときもそうだった)。ただ個人的には、おかげさまで10数回観させてもらっていることもあり、こういうディランもアリだと思っている。明日5日も足を運ぶ予定なので、また楽しませてもらう。

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