『描く人、安彦良和』展を観に行ってきた

渋谷の松濤美術館で開催されている、安彦良和の展示を観に行ってきた。
北海道に生まれ、小学生のときに手塚治虫や横山光輝らの影響を受けて漫画家を志す。ノートに書いたイラストの画力が、既にすごい。やがて青森の弘前大学で学生運動に参加し、除籍になると上京。虫プロに入社してアニメーターとなる。

『宇宙戦艦ヤマト』で絵コンテを担当し、やがて『ライディーン』『ザンボット3』『コンバトラーV』などのロボットアニメ作品ではキャラクターデザインを担当。そして、社会現象となった『機動戦士ガンダム』では作画監督を務め、監督の富野喜幸に次ぐ制作側の顔となった。
展示は、紙に鉛筆で書いた原画やイメージ画が多かった。現在はパソコンなどデジタル作画が主流と思われるが、この人は紙と鉛筆さえあればなんでも描けてしまうのではと思わされた。作画だけでなく企画資料も結構あって、企画力の資質は後に映画制作などにも活かされたと思う。実現に至らなかった作品の原画や企画書も、結構あった。
ガンダムのデザインはメカニックデザインの大河原邦男が担っているが、ガンダムの口元は安彦のアイディアが活かされているとのこと。後にマンガ版『THE ORIGIN』を執筆するとはいえ、ファーストガンダムの時点でモビルスーツ・ガンダムの全身ショットを描いていたのには少し驚いた。
『ガンダム』以外では、『クラッシャージョウ』『アリオン』『ヴィナス戦記』のアニメを観たことがあり、懐かしさを感じながら原画やイラストを観させてもらった。『クラッシャージョウ』の高千穂遙による原作小説は、映画化公開時に7巻まで読んだかな。挿し絵が安彦のものだとは、気づいていなかった。
マンガの方では、西洋だけでなく日本の歴史や神話を題材に描いている作品が多いことに驚いた。キリストを真っ向から描いていたり、日本書紀や古事記をヒントにしていたり、と、すごい視点だ。これらの作品、現在でも読めるのだろうか。

この人は、漫画家とアニメーターを行ったり来たりしている。小説作品も、いくつか出している。アニメ以外ではそこまで話題になってこなかったと思われるが、実はすさまじい仕事量と着眼点を誇っている人で、もっともっと賛辞されていい人なのではないだろうか。
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