ブゴニア(少しネタバレ)
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ヨルゴス・ランティモス エマ・ストーン, ジェシー・プレモンス

陰謀論者のテディと従弟のドンは、カリスマ社長ミシェルを誘拐。テディはミシェルをエイリアンだと信じ込んでいて、彼女が宇宙船と交信しないように髪を剃り、地下室に監禁。ミシェルは自分がエイリアンではないと主張するが、テディは彼女を拷問し、数日後の月食のときには宇宙船が飛来すると言い放つ。
電気椅子で拷問しても音を上げないミシェルを見て、テディはいったん解放し一緒に夕食を摂る。ミシェルはテディの宇宙人や地球環境の話題に話を合わせるが、彼の母の事件に触れた途端テディは激昂し、再び地下に監禁されてしまう。そこへ、テディの知人でもある保安官のケイシーが訪問する。テディは、ケイシーを庭の養蜂場に案内する。
ヨルゴス・ランティモス監督、エマ・ストーンが主演でミシェル役とくれば、一筋縄ではいかないと思ってはいたが(このコンビによる作品だとわかっていたからこそ劇場に足を運んだのもあるけど)、今回もぶっ飛んでいる。陰謀論が絵空事で、ミシェルは単なる被害者かと思いきや、後半でそっくり逆転してしまう。
ミシェルは何の会社の社長なのかがずっと不明だったが、後半になり製薬会社だとわかってくる。テディは実はこの会社のブルーワーカーで、彼の母が会社の薬の投与を受けていたものの、寝たきり状態になっていた。会社は(つまりミシェルは)母の入院をはじめ金銭的な保証をすることで、この事実を公表しないことに同意させた。
陰謀論は根拠がない妄想かと思いきや、ミシェルは地下室でテディがやっていたことを目の当たりにする。ちょっとだけのシーンだったが、恐らくテディは真実にたどり着いていたのだと思う。ミシェルに欺かれて戻ってきたテディに対し、彼女は冷たく淡々と語り始める。逆転劇が、幕を開ける。
テディは、ジェシー・プレモンス。ある時期まではマット・デイモンに似ている俳優というレッテルがあったが(本人も認めていたようだ)、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』以来怪演俳優になった印象。本作では、前半は狂気に満ちていたが、後半では感情をコントロールできなくなっている。泣きながら自転車をこぐシーンは、観る側に強く訴えてくる。
音楽も秀逸。イェルスキン・フェンドリックスが手がけていて、ヨルゴス・ランティモス作品では『哀れなるものたち』『憐れみの3章』に続いて3作目とのこと。日常が非日常に切り替わる瞬間を突き刺すような音色で描写していて、ホラーでもサスペンスでもないショッキングな仕上がりにひと役買っている。
タイトルの「Bugonia(ブゴニア)」だが、古代ギリシャやローマで信じられていた、「牛の死骸からミツバチが自然発生する」という俗説に由来する言葉とのこと。そしてこの作品、韓国映画『地球を守れ!』のリメイクであることを観終わった後に知った。
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