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ベック(Beck)@NHKホール Live In Japan 2025

ベック(Beck)@NHKホール Live In Japan 2025

来日は昨年4月以来だが、今回はアジカン主催の「NANO-MUGEN FES.2025」出演がメイン。その前に単独公演が開催されることになり、足を運ぶことにした。バンドスタイルでの来日は、サマソニ2018以来実に約7年ぶりだ。

予定を20分ほど過ぎたところで、客電が落ちた(開場は30分遅れだった)。先にバンドメンバーがスタンバイする中、ひな壇の後方からベック登場。『Devils Haircut』のイントロを自ら弾き、その瞬間場内が湧いた。これだけで、この日のライヴは素晴らしいものになることが約束された。

バックドロップの映像には「ジャ」「龍を」など、日本語が散りばめられていた。スーツ姿のベックは相変わらずマッチ棒のように細身で、髪をロングにしていた(個人的には、初期のデヴィッド・ボウイを思い起こさせた)。

今回のバンドは、ベックの向かって右に黒人ベーシスト、左にはギターのジェイソン・フォークナー。後方ひな壇には、向かって左にパーカッショニスト、キーボードのロジャー・ジョセフ・マニングJr.、右にドラマーという編成。ジェイソンは、正月のロキソニでのセイント・ヴィンセントのバンドメンバーとしても来日していた。

『New Pollution』ではベックはひな壇に駆け上がり、ロジャーの隣で熱唱。その後もひとつの場所に留まることがなかった。ギターを手にしているときは、前方でジェイソンと向かい合って弾くことが多かった。ヴォーカルオンリーのときは、それこそステージを右に左に、ひな壇の上にと、アグレッシブに足を進めていた。

一時期のベックは、背中を痛めていてステージでのアクションは控えめにせざるを得なかった。数年前に克服したと聞いてはいたし、2016年フジロック2017年武道館、2018年サマソニでその勇姿は既に観ていた。それでも今回改めて実感してしまうのは、会場がホールでより密閉感があるからだ。

フィジカルだけでなく、メンタルの調子もよさそうだった。インドネシアのNANO-MUGEN FES.が中止になったこともあってか、早めに来日しては観光を楽しんでいた。MCでは「トキオ」を連呼していたが、大阪関西万博にも行っていたようだ。

今回ホールでよかったことは、バンドメンバーの動きが結構見えたことだ。ジェイソンは、ジャズマスター、テレキャスター、エレアコを使い分け、ベックからはソロプレイの場も与えられていた。ロジャーは、テノールの声質でコーラスに貢献するほか、おそらく生楽器では表現していない電子音やサンプリングの操作を担っていたと思われる。

ベックは、中盤の『Debra』ではファルセットの輝きを依然としてキープ。アコースティックの『Golden Age』『Lost Cause』も冴え渡り、この人のもうひとつの魅力を発揮させていた。こうして書いていると、プリンスやニール・ヤングを継承しているように思えてくる。

個人的に最も好きなベックのアルバムは、実は『Colors』だ。ポップな方向に大きく舵を切り、それがとても気持ちがいいからだ。『Wow』『Dreams』に続き、『Up All Night』まで演ってくれたのは、ほんとうに嬉しかった。

『Sexx Laws』から終盤追い込みモードになり、そしてひな壇途中の階段に腰掛けてスライドバーを使いしばしセミアコを弾いた後、『Loser』へとつながっていく流れは見事だった。本編は『E Pro』で締め、ほとんど間を開けずに始まったアンコールは、『Where Its At』の長尺バージョン。自らのパートを終えると、ベックは真っ先にステージを去ったように見えた。

バンドだけのアウトロ演奏がしばし続いたが、やがて彼らも演奏を終えてステージを後にした。すると、ベックがひな壇の奥に残っていて、再登場するとマイクとハーモニカを手にアカペラで『One Foot In The Grave』を。最後の最後にきて、ネイキッドなパフォーマンスをしてくれた。

セットリスト
Intro
Devils Haircut
Mixed Bizness
New Pollution
Girl
Qué Onda Guero
Nicotine And Gravy
Wow
Debra
Gamma Ray
Beer Can
Everybodys Gotta Learn Sometime
Golden Age
Lost Cause
Paper Tiger
Dreams
Up All Night
Sexx Laws
Loser
E-Pro
アンコール
Where Its At
One Foot In The Grave

場内にはカメラが設置されていて、このライヴは生配信されていた。そろそろ新譜をリリースしてもいい時期だと思うので、ぜひ映像をボーナスDVDとして付与してほしい。

そして、ベックは最後に「see you next year」とも。やったね。

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