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スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(ネタバレ注意)

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

高校生のピーター・パーカーは、夏休みにクラスメイトとヨーロッパに旅行。しかし、元シールドのニック・フューリーから呼び出され、別の次元からやってきた怪物を、やはり別の次元からやってきたヒーロー、ミステリオ/と共に迎え撃つことを言い渡される。

地元のニューヨークならまだしも、ヨーロッパに来てまで戦うのを渋るピーターだが、旅行先のプラハに炎の怪物が登場。フューリーが用意した黒のスパイダースーツを身につけ、ベックと共に怪物を倒す。ピーターは、ハッピーからトニー・スタークが作ったサングラスを授かっていたが、AI内蔵でスターク・コーポレーションの衛星をも動かせる特殊な兵器のサングラスを自分が持つには相応しくないと考え、ベックに渡す。

しかしベックは、実は以前トニーの部下として働いていたが、自分が開発した技術を否定され、仲間ともども解雇された科学者だった。怪物はベックが手がけたAR(拡張現実)、怪物およびベックの攻撃は多数のドローンによるものだった。ベックは荒唐無稽な物語をでっち上げつつ、トニーの技術を盗むことで復讐を企てていた。

・シネマティック・ユニバース(MCU)の23作目、「アベンジャーズ/エンドゲーム」の後の世界が舞台だ。「エンドゲーム」が壮大かつ壮絶すぎたこともあり、本作の序盤はかなりソフトな雰囲気になっている。ヒーローと普通の高校生との間で揺れる葛藤は、今までのサム・ライミ版やマーク・ウェブ版でも描かれている。今回は、舞台をヨーロッパに拡大したことや、父のような存在だったトニー・スタークの死といった要素も加わっている。

主要キャストは、もちろん「ホームカミング」やMCUから続投している。ピーターのトム・ホランド、ハッピーのジョン・ファブロー、ニック・フューリーのなどだ。コビー・スマルダーズ演じるマリア・ヒルの出番が多めなのは、嬉しいところ。

個人的に、ストーリーや設定はかなり微妙。怪物およびベックがなりすましていたヒーローの正体が、実体のないARというのは、薄っぺらすぎる。つまり、ベック自身は特殊な能力を持たない普通の人間だ。また、ベックを演じたのがジェイク・ギレンホールだが、「ナイトクローラー」を観ている身としては、この人がクリーンにはどうしても見えず、最初に出てきたときからいつか裏切るだろう、いつか敵になるだろうと思いながら観ていて、それがその通りになったに過ぎず、意外性に欠ける。

一方、映像面では結構楽しめた。ARの「設定」は薄っぺらいと書いたが、映像のクオリティは驚くほどに高く、観ていて劇中の現実とどちらになっているか区別するのが難しかった。また、本性が判明したベックを迎え撃つべく、ピーターはハッピーのジェット機の中でスーツを制作していて、数分程度でハイテクスーツが作れてしまうのには、わくわくさせられた。決戦地がなのも、個人的にはテンションが上がった。タワーブリッジも、ロンドン塔も、実際に行ったことがあるからだ。

さて、今回観ていて最も気になったのは制作会社だ。MCUはマーベルスタジオ~ディズニーで制作されていたと思うが、本作はソニーピクチャーズ~マーベルスタジオ制作になっていた。もともとスパイダーマンの映像化権はソニーが持っていたのが、マーベルスタジオでも映像化権が持てるようになったという話は聞いたことがあった。それがスパイダーマンのMCU参加を可能にすると共に、マーク・ウェブ版の「アメイジング・スパイダーマン」が2作で突如打ち切られることにもなってしまった。今回ソニー制作ということは、権利の譲渡ではなく両制作会社が共有しているということだろうか(後で調べたら「ホームカミング」も同じ制作形態だった)。そして、これで、スパイダーマンとソニー制作の「ヴェノム」がクロスオーバーする可能性が出てきたと思う。

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