ミューズ(Muse)@Kアリーナ横浜

予定時間を過ぎた辺りから、BGMが1曲終わる毎に場内から歓声が湧く。7分ほど過ぎたところで客電が落ちる。ステージが明るくなると、既にバンドがスタンバイしていた。もっかの新曲『Unravelling』で、ライヴはスタート。ステージ上に機材は少ないが、バックドロップには縦長の計20面のスクリーンが吊られていて、適宜可動していた。
『Interlude』を経て、花道の先にクリスが足を進めると、観る側としてはこの後何が起こるかわかっていて待つ状態になる。そして『Hysteria』の野太いリフを光るベースで弾くクリス。キターーー状態だ(笑)。この人のベースは、最早リズムキープの枠を超えてマシューのギターと噛み合っている。
今回は、アルバム『Will of the People』に伴うツアーではない。なのでキャリア横断的な構成なのだが、それでもタイトル曲や『Compliance』には、ミューズの「今」を垣間見ることができる。大作志向を伺わせつつ、キャッチーなメロディーと歌詞は印象的で、耳に残る。・・・なのだが、アルバム『Will of the People』は、現在なぜか国内盤が入手困難状態。入場前にグッズのCD売り場を覗いてみたが、やはり取り扱っていなかった。
『Madness』は、マシューがギターを持たずヴォーカルのみで始まり、クリスはダブルネックのベースを弾いていた。クリスは、前半は上部のカオスパッドで、後半のフルバンドモードでは下部の通常のベースで弾いていた。この曲、デジタルなアレンジで静かめな立ち上がりだが、終盤にヴォルテージがあがり、こんなに重厚な曲だったっけ?と驚かされた。
そして、花道に繰り出し、ギターのノブをちょっとだけ触ってノイズを出しては止め、を繰り返すマシュー。その都度歓声が湧き、何度かのじらしを経て『Plug In Baby』のイントロへ。またしてもキターーー状態だ(笑)。個人的には、ライヴの場で熟成されて強固になると共に、ミューズがニューカマーから頭ひとつ抜け出すことに成功した曲だと思っている。
『Unintended』は、マシューとサポートメンバーであるダン・ランカスターのふたりではじまった。ダンは、ライヴを通じてキーボードにコーラスにパーカッションにギターにと、いろいろこなしている。マシューが曲によりギターを手放してヴォーカルに専念できるのは、この人がバックにいるからだ。
『United States of Eurasia』では、マシューはKAWAIのピアノを弾き、バックの映像はユーラシアをフィーチャーした世界地図が。『Supermassive Black Hole』ではマシューはカオスパッド付きギターでイントロを弾いた。かつて、マシューといえばカオスパッドのイメージがかなり強かったが、この日のライヴで使ったのはこの曲のときだけだった。
マシューはほとんど1曲毎にギターを替えていて、5、6本は使っていただろう。そして、それらの中にフェンダーやギブソンは見当たらず、おそらくすべてマンソン・ギター・ワークス製だと思う。マシューと同社はもともと良好な関係にあったが、現在はなんと筆頭株主だそうだ。よって、今まで以上に、自身のアイディアを詰め込んだカスタムを作れる状態にあると思われる。
『Uprising』では、マシューに合わせてオーディエンスも腕を振り上げる。ジョージ・オーウェルの小説『1984年』にアイディアを得たアルバム『The Resistance』の冒頭であるこの曲は、表現の自由を権力者によってコントロールされることへの反発(あるいは恐怖)を掲げ、ミューズにとってのテーマ曲的な位置付けにあるのではと勝手に思っている。
本編ラストは、『Knights of Cydonia』。クリスがイントロをメロディカで弾き、コーラス、ギター、そして終盤の歌詞は合唱になる。今や定番だが、やはりこれはやめられない。アンコールは『The 2nd Law: Isolated System』でスタートするが、SEかと思いきやドラムのドミニクとダンによる生演奏だった。ダンが使っていたのは、MPCだっただろうか。
この後マシューとクリスも加わるが、マシューのジャンパーには電飾が埋め込まれ、ひとりエレクトリカルパレード状態(笑)。『Prelude』を経て、オーラスは『Starlight』。終了後、3人は花道の前方まで歩み寄り、前の方のオーディエンスから日の丸旗を受け取っていた。そして、客席をバックに写真撮影。この写真は、後日バンドのSNSに公開されるだろう。
セットリスト
Unravelling
Interlude
Hysteria
Will of the People
Simulation Theory Theme / [JFK]
Won’t Stand Down
Thought Contagion
[Drill Sergeant]
Psycho
Kill or Be Killed
Compliance
Madness
Plug In Baby
Unintended
United States of Eurasia
Hanging in Victory Square
Time Is Running Out
Supermassive Black Hole
Uprising
Knights of Cydonia
アンコール
The 2nd Law: Isolated System
Undisclosed Desires
Prelude
Starlight
8年ぶりの来日だが、待たされたというより、その空白期間などまるでなかったかのようなライヴだった。バンドの現役感に満ちたパフォーマンス、そしてバンドを熟知したオーディエンス。場内の一体感が、ハンパなかった。もともとKアリーナは音響に優れた会場だが、バンド側スタッフの卓越した技術もあったと思われ、音質的にも素晴らしいライヴだった。
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