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炎上(1958年)

公開日: : 最終更新日:2025/11/25 三島由紀夫

炎上(1958年)

溝口は、病死した父の遺言により、父の友人が住職を務める驟閣寺に身を寄せて修行する。溝口は吃音症で性格も暗く、父を尊敬していた一方、かつて不貞を見てしまったこともあり母を嫌っていた。その母が、実家が抵当に入ってしまい、驟閣寺に住み込みで働くようになる。

大学の同級生戸刈と友人になろうと近づいた溝口だが、内反足の障害を持つ戸刈は溝口の行動を予期していた。戸刈は、自らの障害を逆手に取って女性を手なずける狡猾な男だった。また溝口は、住職が祇園の若い芸姑を囲っていることを知ってしまう。溝口は、美しいのは最早驟閣寺だけと考え、ある決意をする。

三島由紀夫原作『金閣寺』の、最初の映画化になる。金閣寺放火事件は1950年に実際にあったことで、三島はそれを題材に1956年に執筆。本作公開がその2年後であることから、ほぼ出版直後から映画化の話が出たと思われる。今では昭和文学を代表する傑作とされている『金閣寺』は、夜に出た直後から評価が高かったようだ。

ウィキペディアによると、金閣寺や京都仏教界からは反発され、タイトルを変え寺の名前も金閣寺としないことで合意を得た。片や原作者の三島は協力的で、執筆時の創作ノートを提供しつつ、映画制作には全く口出ししなかったそうだ。完成した作品を観て、満足していたとのこと。

ストーリーは、原作とは微妙に変えている箇所がある。冒頭が警察に取り調べを受けている溝口で、放火に至るまでを回想する形で進行。ラストも、決定的に異なっている。また、原作には有為子という溝口の初恋の女性の存在がかなり重要な要素になっているが、本作には登場しない。

キャストは、溝口に市川雷蔵、母に北林谷栄、戸刈に仲代達矢、住職は中村鴈治郎。新珠三千代や中村玉緒も確認できた。監督は市川崑で、この人の出世作にもなったとのこと。音楽は黛敏郎だった。

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