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『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』を観た

スプリングスティーン 孤独のハイウェイ

『The River』のツアーを終えたブルース・スプリングスティーンは、ニュージャージーの郊外に家を借りて住み始める。時折、地元のライヴハウス「ストーン・ポニー」の同名ハウスバンドに加わってステージでギターを弾くなど、リラックスした日々を送る。

幼少期に見た父親と母親が争う姿が脳裏をよぎる中、テレビをザッピングしていてネブラスカ州で起こった殺人事件を知り、ノートに歌詞を書く。次に自宅に機材を持ち込み、アコギ弾き語りで録音する。このテープをもとにレコーディングをスタジオでバンド演奏で行うが、どうもしっくり来ない。

ブルース・スプリングスティーンの伝記映画になる。ノンフィクションの原作『Deliver Me From Nowhere』をもとに映画監督のスコット・スーパーが脚本を書き、それを読んだブルース本人が映画化を快諾。完成後のプロモーションには、ブルースも積極的に参加していた。

時期的には80年代前半、アルバム『Nebraska』制作時になる。それまでバンドモードでギンギンのロックンロールをかき鳴らしていたブルースが、真逆のソロアコースティックアルバムをリリースしたのは、当時大きな衝撃だったと思われる(そして、次作『Born In The U.S.A.』のタイトル曲ほか数曲は既に書かれている)。

設備の整ったエレクトリック・レディランドスタジオでレコーディングした音源が、自宅の決して設備がいいとは言えない環境で録音した音源を超えていないと、ブルースは納得しない。結果、自宅録音テープをマスターテープとしてリリースすることをスタッフに納得させる。

ジョン・ランドゥやレコーディングのスタッフが、ブルースの意思を尊重し活かすよう努めるのはまだわかる。しかし、レコード会社側が戸惑いつつもリリースを受け入れたのは不思議だ。ブルースの存在が、そこまで大きかったのだろうか。一方で、既に大スターのはずのブルースが、レストランなど街中をふつうに歩けているのか?というツッコミもしたくなる。

伝記映画にはつきもののフィクションだが、本作では恋人のフェイがその代表格だ。同級生の妹で、シングルマザー。一時は心を通わせるも、不器用なブルースは愛し方がわからずやがて疎遠になってしまう。実際は、その時期にブルースが交際していた、複数の女性をミックスした存在とのことだ。

キャストは知らない人ばかりだったが、ブルースはジェレミー・アレン・ホワイト。調べたら、去年観た『アイアンクロー』でケリー・フォン・エリックを演じていた人だった。本作では、苦悩する難しい役どころを演じただけでなく、自らブルースの曲を歌っている。

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