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ブレードランナー2049(ネタバレ注意)

ブレードランナー2049

1982年に公開された「ブレードランナー」の、実に35年ぶりとなる続編が「2049」だ。個人的に、劇中において時間軸が隔てられた続編のあるべき姿は、「継承」と「独自性」にあると考えている。前作のエピソードを盛り込みつつ、単体の作品としても魅力ある内容に仕上げられているか。「ガンダム」シリーズには当たりとはずれがあり、「スター・ウォーズ」は3部作毎のそれは成功している。

2049年のカリフォルニア。以前宇宙開拓用に開発された人造人間レプリカントは、見た目は人間と区別できないが、共感する能力が欠落していた。また寿命が4年に設定されていて、数人のレプリカントは反乱を起こしている。開発したタイレル社は倒産し、買収したウォレス社は、より人間に従順なレプリカントを開発する。旧型レプリカントを「解任」するLAPD(ロス市警)ブレードランナーのKは、あるとき旧型レプリカントのモートンを解任した際、木の根元に埋められていた木箱を発見。中には遺骨があり、分析により子供を出産した末に亡くなったレプリカントとわかる。

レプリカントには生殖能力がないとされていて、Kの上司は混乱を防ぐために証拠隠滅と子供の解任をKに指示。Kはウォレス社に出向き、亡くなったレプリカントは30年前に姿を消した元ブレードランナーのリック・デッカードと恋愛関係にあったレイチェルとわかる。一方、ウォレス社社長でレプリカントを開発するウォレスは、生殖能力を完成させることによるレプリカントの最新化と社の事業拡張を狙い、秘書のラヴにKの尾行とレイチェルの子供の捜査を命じる。

前作の監督だったリドリー・スコットは制作総指揮にまわり、監督は「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴが務めている。ドゥニは前作のよさを意識し生かしつつ、独自の世界観を提示するのに成功していると思う。

高層ビルが立ち並ぶ未来都市、降り注ぐ雨、日本語を含む各国語での企業広告は、今回も健在だ。ウォレス社内の周囲に水を張った打ち合わせスペース?は、前作のタイレル社の神殿のようなスペースに通ずる優雅さがある。そして、前作はほとんど夜のシーンだったのだが、今回は日中のシーンもあり、また雨に加え雪が降るシーンもある。2019年時点で既に退廃的だった雰囲気は、2049年では更に深まっている。

前作ではまだ限定的に普及していたレプリカントが、2049年ではより社会生活に密接に関わっているという変化もある。というか、観ているとあの人もこの人もみなレプリカントではないのかと思ってしまうこともある。実は、K自体レプリカントであることが、かなり早い段階でわかってしまう。Kは、誰かの記憶が自分にコピーされたのではないかと思い、記憶を作ることを生業としウォレス社と契約しているステリン博士を訪ねる(前作でタイレル博士は自分の姪の記憶をレイチェルにコピーしたが、2049年時点ではそれは禁止されている。)。

キャストは、Kにライアン・ゴズリング、Kのパートナーのジョイにアナ・デ・アルマス、モートンにデイヴ・バウティスタ(「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のドラックス。元プロレスラー!)、ウォレスにジャレッド・レト、ラヴにシルヴィア・フークス、Kの上司にロビン・ライト(「ワンダーウーマン」でダイアナの叔母で、ダイアナが尊敬していた戦士)。デッカードのハリソン・フォードが同じ役で出演することは、予告編やプロモーションなどで既にオープンになっている。そしてデッカードだけでなく、元同僚のあの人も同じ役で出演するし、前作でキーになっていたあの人も登場する。

新キャラではジャレッド・レトの怪演ぶりや、秘書としてだけでなく鋭い回し蹴りを繰り出す戦闘能力の高いラヴもすごいが、ジョイを演じるアナ・デ・アルマスが光る。ジョイはKの居室に設えつけられたAIだが、アップデートにより女性のホログラフィーとして姿を見せ、携行可能な棒状の機器をKが所持することにより、外に出ることもできるようになった。Kの友人であり理解者であり恋人でもあり、Kに寄り添う姿は「ベルリン・天使の詩」の天使のようにも見える。Kとのラヴシーンは、「her/世界でひとつの彼女」の進化形と思わせてくれる。

「継承」と「独自性」は見事に構築され、期待以上の出来に仕上がった。そして前作のみならず、フィリップ・K・ディックの原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」までをもフォローしている。前作「ブレードランナー」は人間とレプリカントとの対峙に絞ったシンプルなプロットにしているが、原作はより複雑な世界観だ。生物は虫一匹から保護され、生物を保持していることが富裕層のステータスになっている。富裕層以外は、人工的に作られた生物を買うにとどまっているのだ。「2049」では、ほんものの木に温かみを覚えるレプリカントがいたり、蜂が生息していたりするのだ。

興行的には日米を問わずケチをつけられているが(もともと商業的傑作ではなくカルト傑作映画だし)、観た人による評判は上々だったので、安心して劇場に足を運んだ。GWに観た「美女と野獣」を上回る、今年ベスト作品だ。もちろん、前作を知らなくても楽しめることは楽しめる。がしかし、前作を観ておいた方がより楽しめる。ココに書いた以外にも、前作へのオマージュがいくつも散りばめられているしね。

尚、Youtubeで「2049」につながる前日譚の公式短編映像3本が公開中。ワタシは事前に観ていたが、「2049」の後に改めて見直してみて、物語の世界観について理解を深めることができた。こちらも要チェックだ。

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