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her 世界にひとつだけの彼女、雑感

劇場で観ている最中は、わりかし冷静だった。ここでこうなってくれてよかった、この描き方が自然だ、と、確認するように観た。終わって劇場を出た直後は、なかなかことばにできなかった。著名人が絶賛するのとは、ちょっと違うという感触を覚えていた。

結論から言えばとても素晴らしい作品なのだが、自分の頭の中で整理するのにかなり時間がかかった。行き着いたのが、素晴らしさの根幹はやはりサマンサにあり、そこに2つのポイントがあるということだ。

ひとつめは、サマンサの設定だ。コンピューターであり、肉体を持たず、声だけの存在という設定を、最後まで貫き通した。よくありがちな、人間の女性の顔をイメージしてモニターに映すとか、セオドアに近い誰かの意識がインプットされたとか、実はセオドアを想う女性が声を吹き込んでいたとか、というオチにはしなかった。

ふたつめは、サマンサを演じたの、「声の演技」だ。この作品、(『ドラゴン・タトゥーの女』)、(『アメリカン・ハッスル』『マン・オブ・スティール』)、オリビア・ワイルド(『タイム』『トロン:レガシー』)と、ただでさえ女優陣が充実している。なのにスカーレットは、彼女たちを声だけでしのいでいる。

もともと撮影時は別の女優(サマンサ・モートン)が担当していたとのことで、それが編集段階になって監督のスパイク・ジョンズが違和感を覚え、30人ほどオーディションして彼女に決めたのだそうだ。

ソフトな語り口だが、時にはセクシー、しかし、機械らしく無感情なときもある。字幕スーパーで見ていても、演者の声にはあまり気がいかないものだが、今回は彼女の声がものすごく重要だ。ワタシは、劇場公開中の洋画は字幕スーパー版で見ることにしているが、今回ほどそれがよかったと思ったことはない。

『ロスト・イン・トランスレーション』『アイアンマン2』『幸せへのキセキ』『アイランド』など、それまで彼女が出演している作品をいくつか見てきているが、正直言って、あまり興味を持つことはなかった。しかし、しかし、今回の彼女はほんとうに素晴らしい。この作品の続編、作ってほしいが・・・、無理かなあ。

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