雁屋哲原作・池上遼一作画『男大空』
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池上遼一
祭コンツェルン総帥・祭万作が汚職を告発しようとした矢先に暗殺され、5人の息子のうち4人までもが殺害されてしまう。それは、日本最大のコンツェルン東西財閥の鬼堂親子による陰謀だった。末子の祭俵太は鬼堂親子を倒すため寺に籠り過酷な修行を重ね、「神骨拳法」と心眼を体得する。
鬼堂家の長男・鬼堂凱は中国拳法を極めた暗黒拳法の使い手で、日本支配を目論む存在。俵太は武術だけでなく、父が掲げた「愛と平等」の理想を胸に、暴力と支配に覆われた世界を打ち破ろうとする。仲間と共に巨大な権力構造に立ち向かう彼の戦いは、単なる復讐から社会を変革する闘いへと姿を変えていく。
週刊少年サンデーに1980年から1982年まで連載され、雁屋哲と池上遼一のコンビが『男組』に続いて手がけた作品になる。なので、よくも悪くも『男組』との脳内対比をどうしてもしながら読んでしまう。
『男組』は単行本25巻、『男大空』は15巻で、後者の方がテンポがよく展開が早く、一気読みするには読みやすい。画力については、『男組』の前半はまだ荒さがあったが、後半からは劇画タッチ最高峰の描写に仕上がっている。よって、『男大空』では最初からクオリティの高い画で楽しめる。
祭俵太は末っ子の甘えん坊、正義感は強いが素直でまっすぐすぎるのがいいところでも悪いところでもある。ただ、そんな彼だからこそ周囲の仲間は放っておけず、いくらでも力を出す。徹底して硬派の流全次郎とは、また異なる主人公になっている。
俵太のライバル鬼堂凱は、正直言って神竜剛次ほど非情でも悪漢でもなく、人間臭さや弱さが垣間見られる。ただその代わり、許婚の女姫子がある意味ラスボス的な悪の権化で、毒の注射で俵太のすぐ上の兄真也を殺し、後半では権力のため平然と鬼堂凱を裏切る。
俵太は荒くれ者の巣窟となっている百合香学園の校長になるが、学内を牛耳っていたのは鬼堂凱の部下七人委員会だった。彼らは対立を経て俵太たちの仲間になるが、そのひとり幾代がキーパーソンになっている。俵太の人柄に触れ惹かれていく一方、かつては鬼堂の女でもあり、最終的には鬼堂の理解者として傍にいることを選んでいる。
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