劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来

産屋敷輝哉が自らを囮にし、鬼殺隊の柱や竈門炭治郎たちが鬼舞辻無惨を追い詰めたかに思われた。がしかし、突然地面が抜け落ち、一同は無限城に落とされる。無惨は繭の中に身を収めて、珠世に注入された鬼を人間に戻す薬の解毒に集中する。

胡蝶しのぶは、上弦の弐童磨と対峙。童磨は、しのぶの姉カナエを殺した鬼だった。我妻善逸は、元兄弟子で上弦の陸になった獪岳と対峙。獪岳が鬼になったことで、ふたりの師匠桑島慈悟郎は腹を切っていた。炭治郎と冨岡義勇は、上弦の参猗窩座と対峙。猗窩座は『無限列車編』終盤に登場し、炭治郎が動けず煉獄杏寿郎が戦った鬼だった。

これまで、那田蜘蛛山編や無限列車編、遊郭編、刀鍛冶の里編で、それぞれに鬼との戦いがあり、クライマックスがあった。そして、いよいよ最終決戦だ。劇中の時間軸ではほぼひと晩の出来事になるが、それが劇場版3部作として描かれることになり、本作はその第一弾になる。

映像の美しさはテレビ版から周知の事実だが、今回は、その名の通り無限に広がっていく無限城のスケールの大きさと四次元のような異空間が、一層視覚に訴えてくる。そして今回感じたのは、戦闘シーンに流れる音楽がロック色を強くし、それが鬼と鬼殺隊の死闘にマッチしていたことだ。

善逸は滋悟郎の遺志を継ぎ、剣士として成長した姿を見せた。一方の獪岳は、闇落ちしたクズ野郎と言ってしまうのは簡単だが、彼の心情には少し共感もできた。泣き虫で後ろ向きな善逸と並べられるのは面白くなかったはずだし、黒死牟とやりあって勝てるはずはなく、鬼になるか殺されるかの選択を迫られていたのだ。

しのぶは、自らの命を賭けて童磨に挑んだ。ほんわかした声色のはずの早見沙織の声が、逆上し感情を爆発させて研ぎ澄まされた声になっていた。ほかの作品でも、聞いた瞬間彼女の声とわかる独特の声質が、ここではほとんど感じられなかった。童磨は、その強さはまだよくわからないが、今回で出自が少しわかった。

鬼には、人間だった頃の記憶をそのまま保持している鬼と、記憶を失っていて何かをきっかけによみがえってくる鬼がいることがわかった。後者の最たるが、本作での猗窩座だ。

なぜ強さを求めるのか、なぜ体に3本の線が入っているのか、なぜほかの鬼のように武器を持たずおのれの肉体のみで戦うのか。それらは、人間だった頃の描写にて明らかになる。もとの名を狛治と言い、実父を亡くした後素手の武術道場を営む男に拾われた。男のもとで武術を学び、男の娘の恋雪と恋仲になった。最後に猗窩座/狛治を救ったのはふたりとの思い出で、男の声は中村悠一、恋雪の声はLynn（『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のミオリネ）だった。

その猗窩座と戦った、炭治郎と冨岡の共闘も胸アツだ。冨岡は炭治郎が最初に出会った鬼殺隊の柱であり、それは第一話でのこと。口数が少なく決して人当たりがいいとは言えない冨岡だが、それでも鱗滝左近次に炭治郎と禰豆子を預け、禰豆子か人を食ったときには共に腹を切る覚悟をしていた。柱稽古編では錆兎との友情が描かれ、一時は遠のいた炭治郎との距離感も縮まった。

第二弾の公開時期は、まだ発表されていない。個人的な予想は、早くて1年後の来年夏だと見ている。そして公開直前には、本作がフジテレビで放送されると思う。