岸辺露伴は動かない 懺悔室(ちょこっとネタバレ)

ヴェネツィアの大学での講演会に招待された、岸辺露伴。取材と称し教会の懺悔室に入ると、告解を求める男がやってくる。男は露伴を神父と思い込み、露伴は神父側の小部屋とわからずに入ってしまったが、そのまま男の告白を聞く。
男は、若い頃に自分の身に起こったことを話し、幸せになった瞬間に絶望が訪れる呪いにかかっていると語る。直近に迫った幸せとは娘の結婚であり、その娘は露伴が少し前に知り合ったマスク職人のマリアだった。そして彼女の婚約者は、露伴を招待した大学の理事だった。
『ジョジョの奇妙な冒険 第4部』のキャラクター岸辺露伴を主人公とする実写作品で、劇場版は『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』に続く2作目になる。前作では実際にルーブル美術館でロケを行ったが、今回は全編ヴェネツィアで撮影とのことだ。
原作の『懺悔室』は、岸辺露伴エピソードの最初の作品だ。ここでは、舞台はほとんど教会の中に収まっている。一話完結の尺につき、劇場版にするにはどうしてもオリジナルストーリーの追加が必要。本作では、『懺悔室』のプロットを前半に配し、その後の展開を大きく膨らませている。
キャストは、岸辺露伴の高橋一生、泉京香の飯豊まりえはもちろん不動。原作では泉の登場は1回きりだが(注)、実写版ではレギュラーキャラになっている。頭は切れるがクセが強い露伴と、天真爛漫で時折見せるひらめきが鋭い泉は、ブラック・ジャックとピノコのような関係にも見える。
告解する男は井浦新、男の若い頃は大東駿介、男に取り付く悪魔は戸次重幸、マリアは玉城ティナ。原作に沿ったポップコーンのシーンは大東の怪演が凄まじく、観終わったところで最も印象に残ったのは誰?と聞かれればこの人の名をあげると思う。
音楽は菊地成孔がテレビ版から担っているが、今回は一段とホラー色を濃くしていて、作品の演出に貢献している。
ヴェネツィアを舞台にした作品は、これまでにも何度か観ている。『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』はそのものだったし、007シリーズでは『カジノ・ロワイヤル』をはじめ多数、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』でも、舞台のひとつになっていた。景観に優れ密閉した空間は、現実でありつつ別世界のような雰囲気もあって、映画の舞台として愛されている。
注:2022年の書き下ろし『ホットサマー・マーサ』に泉京香が登場していることを『岸辺露伴ジャンプ』を読んで知った。
関連記事
-
-
岸辺露伴 ルーヴルへ行く(少しネタバレ)
人気マンガ家の岸辺露伴は、リアリティを求めて取材するうちに真っ黒な絵の存在を知り、オークショ
-
-
(実写映画)ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章
原作は1987年以来30年以上に渡って連載され、現在は第8部に差し掛かっている『ジョジョの奇
- PREV
- アイ・アム・マザー(2019年)
- NEXT
- 岸辺露伴ジャンプ
