*

ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)『Ladies And Gentlemen(DVD)』

ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)『Ladies And Gentlemen(DVD)』

ローリング・ストーンズの72年公演のライヴDVDを観た。もともと劇場公開用として撮影・制作されていながら結局お蔵入りとなり、それが2010年になって突如日の目を見たという、いわくつきの作品だ。

2010年9月にはDVDリリースに先駆けて劇場公開され、更に日本武道館で500インチの巨大スクリーンで上映もされ、ワタシも足を運んでいた。時期としては、『Exile On Main St.』リリースに伴うツアーで、全米ツアーの中盤となるテキサスの4公演から編集されている。

ディスク1は、ライヴ本編とボーナス映像。当然ながらストーンズのメンバーは若々しく、勢いがある。『Happy』は、少なくとも90年代以降のツアーでは、ミック・ジャガーが袖に捌けてキース・リチャーズがメインを張る曲なのだが、ここではなんとミックも参加。ミックだけが歌うパートあり、2人で1本のマイクで歌う場面もあり、かなり新鮮だ。

カメラワークがどうしてもミック中心になる中、時折映る各メンバーの動きを確認。ピアノはイアン・スチュワートではなくニッキー・ホプキンスだ(イアンは「ミステリー・ピアノ」としてクレジットされていた)。サックスは、現在もストーンズのツアーに帯同するボビー・キーズで、スリムな体型は今と全く違う(笑)。

そして、この時期の映像だからこそ注目したいのが、ミック・テイラーだ。ミックの向かって左後方に陣取ってスライドギターを鳴らし、サウンド面での貢献度は絶大だろう。まるでジェフ・ベックのように、ギターに魂を乗せるようにして弾きまくっていた。ただ、後の脱退劇を知っていて観ると、やはり少し浮いているようにも見えてしまう。

ディスク1のボーナス映像は、ミックの2種類のインタビュー。ひとつは当時のテレビ番組用で、開演直前のタイミングでこなしている(今ならまずありえない)。もうひとつはリリースのために収録した現在のミックで、冷静に振り返っていた。他には、ライヴ本編未収録の3曲のスタジオリハーサル映像がある。

ディスク2はまるまるインタビューで、ビル・ワイマン、ミック、キース、チャーリー、ミック・テイラーと全員分が収録。ここでも、やはりミック・テイラーに注目してしまう。ストーンズと、以前在籍していたブルース・ブレイカーズは共にブルースを基盤にしているというコメントには説得力があるし、バンドをやっていてもソロをやりたくなるときがあるという、どきっとさせる発言もある。こうした発言はバンドマン誰しも思うことかもしれず、思ってもそれが必ず脱退に結び付くとは限らない。観る側として、過剰反応しすぎかも。

武道館の巨大スクリーンと大音量の迫力には当然及ばないが、ボーナス映像はDVDだからこそ観られる特典だし、ライヴ本編もいろいろ細かいところまで追える。60年代は映画撮影の試みが多く、80年代以降はMTVの隆盛もあって、映像が不可欠なものとなっている。その狭間の70年代は、これまで映像作品に乏しく、ザ・フー『The Kids Are Allright』の独壇場だった感がある。ストーンズも、そして他のアーティストも、70年代映像が復刻し世に出ることを歓迎する。

関連記事

BS音盤夜話

ロックの名盤を語り尽くそうという主旨の音楽番組、「BS音盤夜話」を観た。萩原健太、近田春夫、

記事を読む

黄金のメロディ マッスル・ショールズ

黄金のメロディ マッスル・ショールズ

アメリカ南部の人口8000人の街「マッスル・ショールズ」にある伝説的なスタジオを追ったドキュ

記事を読む

ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)『Live At The Fonda Theater 2015』

ローリング・ストーンズは、2015年にZip Codeツアーを敢行。その初日である5月20日

記事を読む

ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)『Exile On Main St.(Super Deluxe Edition)』

ローリング・ストーンズが1972年にリリースした名盤『Exile On Main St.』が

記事を読む

ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)@グラストンベリー

グラストンベリー2日目、ウェブキャストでサヴェージズ、ドーター、エヴリシング・エヴリシングな

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑