ピクシーズ(Pixies)@EX-Theater

ほぼ定刻に客電が落ち、少しの間SEが流れた後に4人が登場。オープニングは、なんと『Bone Machine』だ。ファーストアルバムの1曲目はライヴの出だしに相応しいはずだが、近年のツアーではオープニングどころか公演によってはセットから落ちる場合もあったので。もちろん嬉しい。
ステージ上の機材は最小限で、アンプの数も少なく、スペースが結構あった。特に装飾もなく、後方か曲によりライティングで彩られるくらい。その分、4人の演奏がより際立っている。ドラムセットはひな壇に設置されていて、デイヴィッド・ラヴァリングは若干うつむき気味でプレイしていた。
ブラック・フランシスとジョーイ・サンティアゴは、スペースを使い結構前後に動いていた。ブラックはテレキャスターとセミアコを使い分け、あと1本はフェンダージャガーだったかも。ジョーイはES-345とレスポール、レスポール・カスタムを使い分けていたど思う。
リードはジョーイ、リズムはブラックだが、ふたりともディストーションが過ぎる(笑)。特に、テレキャスであんな音出る?と一瞬思わされるが、それはエフェクターのせいだろう。ブラックは5、6個くらい、ジョーイは10個近くが足元にあったように見えた。
そして、ある意味今回のキーパーソンなのがベースのエマ・リチャードソンだ。長身でブロンド、そして短髪が似合う女性アーティストはアニー・レノックス以来と、勝手に思ってしまう。見た目の存在感だけでなく、ベースプレイも、そしてヴォーカルも問題はない。
新譜『The Night the Zombies Came』で聴いてはいたが、声質はキム・ディールに近く、なんだか安心。ピクシーズのベーシストはコーラスだけでなく歌えることも求められるが、『In Heaven』を歌い切るさまは凛々しく、『Here Comes Your Man』での「so long~,so long~」とコーラスを入れるところはチャーミングだった。
前半は曲間を最小限にして次から次へと演奏しまくり、『Monkey Gone to Heaven』『Hey』『Gouge Away』など、全く出し惜しみしない。『Wave of Mutilation』は、通常バージョンと「UK Surf」を両方演奏。『Vamos』では、ジョーイはかぶっていたキャップを脱いでそれでギターを弾いていた。この人、ときどきトリッキーなことをやる。
セットリストかメンバーの足元になかったと、大阪や前日の公演に行った人のSNS投稿を見かけた。この日の公演も、確かに4人の足元にはなかったが、ドラムセットの角に紙が貼られていて、ブラックはときどき確認しに行っていた。きっちりとリストを決めてはいないが、候補曲をリストアップしてあって、その場で決めて演奏していたのかもしれない。
中盤はミディアム調の曲が続き、新譜からも『Motoroller』『Mercy Me』『The Vegas Suite』などが演奏されていた。激しさを抑えた新譜の世界観は、バンドの現在位置だと受け止めている。
終盤、デヴィッド・ボウイがカヴァーした『Cactus』でギアが入り、ラストは『Where Is My Mind?』だ。この曲、個人的には超ツボだった。映画『ファイト・クラブ』のラストに使われているという情報は以前から知っていたが、今年はじめて映画を観て、なるほどこれかと思ったのだ。この場においては、4人が4人とも誇らしく歌い演奏しているように見えた。
MCなしと言われていたが、この日は英語でまくしたてる客にブラックが反応していて、緊張感というよりは時折和んだ空気が漂うライヴになった。そして、昨年加入したエマが、バンドにフィットしているように見えたので、まずはひと安心だ。
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