*

家族ゲーム(1983年)

公開日: : 最終更新日:2023/02/12 出演作品

家族ゲーム(1983年)

4人家族の沼田家は、長男慎一は成績優秀の高校生で、次男茂之は成績が振るわない中学生。茂之は高校受験を控え、家庭内はピリピリしている。父親は茂之の成績をあげるべく、家庭教師として吉本を雇う。

3流大学の七年生という吉本は、ビンタも辞さない厳しい態度で茂之に勉強を教える。茂之自身は、自分が頭が悪いとは思っておらず、ただやる気がないだけだと考えている。2人の関係は決して良好ではないが、それでも茂之は徐々に成績をあげ、Aランクの高校に合格する。

何度か観ている作品だが、よくわからず、改めて観てもやはりよくわからなかった。ただ、誰か特定の人物に感情移入するような作品ではなく、シュールな世界観そのものを観て、何かを感じるものなのではないかと思った。

どのキャラクターも、ひとくせある。吉本はとても大学生には見えず、飄々としていて感情を表に出さない。目玉焼きをすする父親は恐らく学歴コンプレックスで、息子をいい大学に入れ、いい会社に入れるという、ひと昔前の考え方に染まっている。

慎一は親の意を汲んでいい子を装っているが、不登校になるなど微妙な兆しを見せる。茂之は仮病を使って学校を休んだりいじめにあったりしていて、性格も煮え切らない。父親が息子と直接向き合わない分、母親が息子の相手を一手に引き受けさせられているが、息子のことをよくわかってはいない(ただ、この状況で母親は責められないと思った)。

クライマックスは、茂之の合格祝いで吉本がムチャクチャやらかすシーンだ。しかし、吉本は怒りを爆発させるでもなく、無表情に近い形で淡々と暴れていて、バラバラな家族が向き合うきっかけに、という類いとは異なる。

どう受けとればいいのか考えた末、タイトルに立ち返った。要は「ゲーム」なのだ。この家族も、学校も、生活も、ここで描かれているものすべてが。

キャストは、吉本に。本作はこの人の評価を高め、いくつかの映画賞を受賞もした。非日常を生きるアクションスターを脱却し、日常を生きる男を演じたことになっている。が、何を考えているかわからない不気味さは、アクションスターから継続している。監督は森田芳光で、この後も『それから』で優作とコンビを組む。

父親は伊丹十三で、この後映画監督として話題作を次々に発表。もしかすると、ここで森田に刺激を受けたのかもしれない。母親は由紀さおりで、シンガーとしてのイメージが強い人だが、ここでの演技はこの人の俳優業の代表作になっていると思う。慎一は辻田順一という人だが、どうやらその後芸能活動の方には行かなかったようだ。

茂之は宮川一朗太で、昨今は『半沢直樹』での俳優業やバラエティー番組の出演などで活躍中。本作でデビューとのことだが、この2年後の『姉妹坂』での堂々たる佇まいを思うと、短期間に飛躍的に成長したと思わせてくれる。

学校の教員に、松金よね子や加藤善博、伊藤克信。沼田家と同じ団地に住む主婦に戸川純、吉本の恋人らしき女に阿木燿子と、脇を固める俳優陣が実は豪華だった。

関連記事

華の乱(1988年)

歌人の師匠でもある与謝野寛に恋い焦がれていた晶子は、同僚の山川登美子を出し抜いて寛と結ばれ、

記事を読む

ひとごろし(1976年)

剣豪の仇討ちを名乗り出た武士の六兵衛は、実は臆病者で剣もまともに使えない、町の笑い者である。

記事を読む

俺達に墓はない(1979年)

刑務所帰りの島はヤクザのノミ屋の金庫を狙うが、なんと金庫を襲撃した先客がいた。島は男(滝田)

記事を読む

探偵物語

松田優作のテレビドラマの代表作と言えるのが、「探偵物語」だ。しかし、ワタシにとってのこの人は

記事を読む

蘇える金狼(1979年)

東和油脂の経理部に勤める朝倉哲也は、日中は実直なサラリーマン。しかし、夜は体を鍛え拳銃を操る

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑