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椎名林檎@さいたまスーパーアリーナ 2014年11月30日

公開日: : 椎名林檎

椎名林檎@さいたまスーパーアリーナ 2014年11月30日

前日はグッズ購入のために早めに会場入りしたが、この日は開場時間の少し前に到着。200レベル入場口のAゲートは、入ってすぐ右手に芸能人やテレビ番組から届いた花が飾られていて華やかだが、アリーナ入場口のW2ゲートは、機材搬入口の一部を間借りしたかのようで、雑然としていた。

定刻を10分ほど過ぎたところで、客電が落ちた。オープニング映像を経て幕が開き、『今』でライヴはスタートする。前日のライヴを体験済みなので、ステージとアリーナ後方のPA席とを交互に見ながら、この後に起こることを待ち受けた。

湯婆婆、いや林檎きたー。
ブルーライトもきたー。

手旗を高く掲げて振る。ブルーライトに当たって反射する手旗が光の玉の洪水の中に、自分もいるのだと実感する。そして、トロッコ上の船に陣取り、歌いながらステージに向かって行く林檎。間近ということもあり、帽子や衣装がよく見えた。衣装が、重そうだ。

『葬列』で林檎はステージに姿を見せ、中央前方に陣取って歌う。今回彼女を支えるバンドは、今までにも増して豪華だ。ドラムは、去年のツアーにも参加していた、SOIL & “PIMP” SESSIONSのみどりん。発せられるビートこそラウドでヘヴィーだが、プレイそのものはクールで、ステージ全体を俯瞰で見ながら叩いているように見えた。

ベースは、100sの鳥越啓介。曲により、ウッドベースやスティックも駆使していた。アコーディオンとキーボードには、佐藤芳明という人。この2人、決して派手ではないが小気味よく立ち回り、今回のステージに欠かせない人材なのだと思わされる。

ピアノは、第1期東京事変メンバーだったヒイズミマサユ機。この人はクールな佇まいにもかかわらずスタンディングで弾き倒すスタイルで、オンリーワンの輝きを放っている。個人的に第1期事変は2回しか観ておらず、今や記憶があいまいなところがあって、この人こういう人かと再認識させられた。

ギターは、竹内朋康と浮雲のツイン。東京事変はもとより、林檎ソロでも、バンドにギターが2人になったのは、今回がはじめてではないだろうか。リードやソロの大半を担ったのは竹内で、浮雲はほぼサイド。しかし、この人はバックコーラスのほとんどを担い、後半では林檎とツインリードで歌っていたので、トータルでの貢献度はもちろん絶大だ。場内、浮雲への歓声は林檎に次いで大きかった。

バイオリンおよびコンダクターの斉藤ネコは、亀田誠治に並ぶ林檎のパートナー代表格であり、また保護者的存在だ。彼女が寄せる信頼も、絶大と伺える。ヒイズミと浮雲は、実は東京事変では入れ違い。この3人が同時に林檎のバックに並び立っていることに、感慨深いものを覚える。やっぱり、この状況ってすごいことだよね。

さて今回のライヴ、演奏される曲は『三文ゴシップ』以降が中心で、以前のソロ時代の曲はほとんどない。つまり、ソロ林檎の総集編ではなく、現在形の表現というわけだ。もっと言えば、6年前のRINGO EXPOがひとつの区切りで、それ以降というようにも受け取れる。そうした中貴重かつ嬉しかったのが、ロックバージョンの『やっつけ仕事』や、事変ナンバー『遭難』だ。

事変解散以降、彼女はロック的なアプローチを意図的に避けてきたように見えた。それがNHKにサッカーW杯のテーマ曲を出した辺りから、ロック方面に切り替えてきたなと思っていた。いろいろ引き出しの多い彼女だが、その中心核をなすのはやはりロックだと思う。

セルフカバー集『逆輸入』、リリースされたばかりの新譜『日出処』、この2枚が今回の柱だ。あまりライヴ向けとは思えない作風だが、バンドやオーケストラの高度な演奏力が、そして何より林檎のエネルギーが、生演奏による再構築を実現可能にしている。

前日のライヴでわからない曲がいくつかあり、もしや新曲か!?と思い帰宅後調べてみた。そこでわかったのが、石川さゆりに提供した2曲を歌っていたのだ。『暗夜の心中立て』は演歌チックでまあそうかなと思ったが、『最果てが見たい』は透明感のあるロックナンバーで、これ林檎が歌うからしっくりくるが、ほんとうに石川さゆりが歌ってるのかな、とも思った。さゆりバージョンも気になるところだ。

W杯テーマソング『NIPPON』では林檎もギターを弾き、つまり竹内・浮雲とトリプルギターに。この状況も、林檎史上初では。序盤のギュイーーーンというリフは彼女自身で、手にしているギターはギブソンRDだった。

続く『自由へ道連れ』は、林檎はスピーカーを手に歌い、ステージからゴンドラに乗ってアリーナ後方のPA席まで移動する。至近距離を彼女が通るという視覚的興奮と、地面から突き上げてくるビートの両方を、同時に体感する。アリーナ席にいることの幸福感を、これほどまでに感じたことはない。個人的には、2日間で瞬間最高を記録したときになった。

いよいよ本編大詰めとなり、林檎はスリップドレス姿を経て、ゴールドラメのレオタード姿に!ステージセットはド派手になるが、キャバレーの体でむしろ密室性を帯びてくる。キャパ2万のさいたまスーパーアリーナをなのに、だ。『主演の女』『静かなる逆襲』と、昭和テイストを爆発させて本編終了する。

アンコールは『マヤカシ優男』を経ての『ありきたりな女』。最後はオケなしのバンドだけでの演奏となったが、ピアノを弾いていたのはヒイズミではなく佐藤だった。エンドロールに流れた曲、調べたら事変のボックス『Hard Disk』収録の『BON VOYAGE』だった。浮雲が歌い、ヒイズミがピアノを弾いているそうだ。

セットリスト
1.今
2.葬列
3.赤道を越えたら
4.都合のいい身体
5.やっつけ仕事
6.走れゎナンバー
7.渦中の男
8.遭難
9.JL005便で
10.私の愛する人
11.禁じられた遊び
12.暗夜の心中立て
13.Between today and tomorrow
14.決定的三分間
15.能動的三分間
16.ちちんぷいぷい
17.密偵物語
18.殺し屋危機一髪
19.望遠鏡の外の景色
20.最果てが見たい
21.NIPPON
22.自由へ道連れ
23.流行
24.主演の女
25.静かなる逆襲
Encore
26.マヤカシ優男
27.ありきたりな女
28.BON VOYAGE

ワタシは99年に渋谷のクアトロではじめて彼女のライヴを観て以来、ずっと見続けて来ている。今回のライヴは、歌、演奏、踊り、映像、仕掛け、と、全方位に渡って、現在の彼女が保持しうる能力のほぼすべてを発揮した、ソロ名義としては歴代最高レベルに達したライヴだったと思う。活動休止前の曲をほとんど演らずして、このクオリティの高さはすごい。すごすぎる。

石川さゆりとコラボレーションを果たし、テレビ番組では蜷川実花とも東京オリンピックについて語り、宇多田ヒカルのカヴァーアルバムには参加しと、彼女は自身の「クセ」を崩さないままに確実に活動の幅を広げていっている。今後の彼女の活動ももっともっと楽しみになってきた。

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