Pixies 2005.12.11:Studio Coast

 この日の公演は、追加にして来日最終。そして「Pixies Tribute "Alive"」というタイトルが付与された、イベント形式のスタイルだ。ピクシーズ以外にも日本人バンドが2組エントリーされていて、つまりはピクシ−ズのファンもいれば、日本人バンドのファンも会場に足を運んでいるものと思われる。





 まず1組目はビートクルセイダーズ。メディアに露出するときは紙のお面をかぶっていて、決して素顔は見せない。以前テレビのミュージックステーションに出演したときも、お面をかぶったままで演奏していた。で今回だが、まずは野球のメンバー交代に似せたようなアナウンスがかかり、ドラマーがサポートであることが告げられる。そしてメンバーがステージに姿を見せたが、やはりお面を被っていた。果たしてこのままなのか、それとも・・・と注目していたら、やがて全員がお面を取ってフロアに投げ入れ、めでたく素顔が公開された。


 メンバーは5人で、フロントがギター&ヴォーカルのヒダカトオル。右にベース、左には赤スーツに短パンという、まるでAC/DCのアンガス・ヤングのような格好のギター。ヒダカとベースの人との間にはキーボードの人がいるのだが、彼はステージ上で踊っている方が大半で、合間にキーボードを弾くといった具合。ヒダカが歌う歌詞は英語。音は洋楽テイストが色濃く、ポップなハイスタという感じ。見た目はぜんぜんイケてないし、MCは寒くてしかも下品だったが、音自体は悪くないと感じた。





 2組目はモーサム・トーンベンダー。ビークルは観るのが初めてだったが、モーサムは去年のフジロックと今年のHeal Niigataとで観ているので、さして期待も抱くことなくゆったりと臨んだ。まず出だしはベースの人がヴォーカルを取って、ダンサブルだが変態チックなノリの曲(後になって、『Tribute To New Wave』に収録されているギャング・オブ・フォーのカヴァーだと知る)。続いて自らの曲に移行するが、相変わらずの爆音。しかし演奏そのものは引き締まっていて、観る側を引き込む魔力を備えており、このバンドのよさを再認識した。





 2バンドのライヴによって開演から2時間近くが経ち、そしていよいよピクシーズ登場。オープニングは予想通りの『Bone Machine』、更には『I Bleed』を経て、早くもヒットチューン『Monkey Goes To Heaven』ときた。それでも序盤は1曲1曲をじっくりと演奏するような感じで、フロアも思ったほど熱狂していない。キム・ディールは日本語で挨拶したり、「イチ、ニ、サン、シ♪」と日本語でカウントを取ってから演奏が始まったりと、すっかり日本に親しんでいる様子だ。


 私は5日のZepp Tokyo公演も観に行っているのだが、その日はセカンド『Doolittle』からの曲がかなり多い、どちらかというとマニア度の濃い内容だった。それに対し、今回はベスト・オブ・ピクシーズ的な選曲になっていて、この構成は去年のフジロックも思い起こさせる。5日のときは聴けずに今回聴けた主な曲は、『Cactus』や『Nimrod's Son』といった辺り。2公演を観ることで、ピクシーズのスタンダードなスタイルとよりディープなスタイルの2種類が堪能できている感じだ。


 スタジオ・コーストは音響の質も良好なようで、各パートが発する音色もクリアに聴き取れる。ブラックのギター、ジョーイのギター、デヴィッドのドラム、そしてキムのベースだ。私はキム側で観ていたこともあってか、特にベースラインが明確に聴き取ることができた。そして思ったのが、キムのベースはピクシーズのサウンドの要として、非常に重要な役割を担っていることだ。重低音がドラムと絡み合ってリズムラインを安定させているし、またベースのリフで始まる曲も多い。





 演奏は、やがて曲間を切らさず次から次へと連射するモードに移行し、序盤はおとなしめだったフロアのオーディエンスも、曲に合わせて歓声を発し、手を差し伸べ、踊るようになってきた。『Debaser』での掛け合いは、後方から見ていて見事だった。一方バンドの方は原曲に忠実に演奏することが多く、あまりアドリブにも走らない。『La La Love You』もあっさり終わったし、『Vamos』でのジョーイのパフォーマンスも地味かつ短めだった。


 『Where Is Your Mind?』で本編を締め、例によってメンバーはステージの前の方に出てきて手を振ったり挨拶したりし、場内はすっかり和んだ雰囲気に包まれる。この日はブラックとキムの寸劇のようなやりとりがあって、そして再び4人は持ち場に戻り、アンコールへ。曲はやはり『Gigantic』で、素晴らしい時間をありがとうという気持ちと、これでピクシーズのライヴも見納めになるんだなあという少し寂しい気持ちとが交錯した。





 この日のピクシーズのライヴは1時間程度で、5日が1時間半くらい演ったのに比べると凝縮バージョンという感じになった。イベント形式のライヴということでこのようなスタイルになったのかなと想像するが、短かったことに対しては個人的になんら不満はなく、素直に楽しむことができた。そしてふと思うのは、再結成はツアーのみなのか、それともこの勢いで新作が生まれるのかということ。もし新作が発表されるのなら、ぜひとも聴いてみたいと思うし、それに伴うツアーでまた来日してくれないものかと、期待は膨らむ。





(2005.12.15)
















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