Heal Niigata 2005.1.10:横浜Blitz

新潟中越地震のベネフィットとして、やはり新潟は苗場スキー場で開催されているフジロックフェスティバルにゆかりのあるアーティストたちが、各地でチャリティコンサートを行うという試みのHeal Niigata。まずは先陣を切って6日に大阪で開催され、翌7日には名古屋。そして祝日の10日は、東京2箇所と横浜、更には札幌と、4箇所同時開催となった。私は横浜公演に参加し、チケット代やTシャツ代などで、微力ながら被災者の方々への援助を行うことに。そして出演アーティストたちの姿勢や想いを、確かめることにした。





16:00 - 16:05 オープニング

 ブライアン・バートン・ルイスが進行を務め、このイベントが行われることになったいきさつや、新潟の状況などを簡単に説明。被災以降の苗場は、温泉やスキー客などが例年より少なくなっているそうで、被災からの復興はもとより、観光地として新潟をもっと利用してほしい、という呼びかけがあった。この後は日高社長が登場して挨拶をし、次いで湯沢町長が挨拶を。このお2方はこの後東京の2会場にも出向き、挨拶をしたようだ。フジロックを始めた人や現地でフジロックに協力してくれている人が壇上にいて、そしてフジロックに参加している若い人たちがフロアにすし詰めになっているという光景は、なんだか微笑まく、かつ誇らしかった。



16:05 - 16:35 Mo'some Tonebender

 観るのは昨年のフジの2日目レッドマーキー以来。SEに導かれるように登場し、のっけから爆音で蹴散らす。3ピースとは思えない音の迫力だ。ただフジではもっと気合いが入っていたというか、鬼気迫るようなプレイだったように記憶していて、今回は楽に演奏しているように見えた。これが普段のモーサムのあり方なのかな。ベースの人は、ある曲ではトランペットを吹きながら妙な踊りをしていた。なかなかいいキャラクターだ。



16:55 - 17:25 Audio Active

 5人編成で、暗いステージの中でインストナンバーを延々30分間演奏。曲の切れ目がほとんどなかった。いったい何曲演ったのだろうか?がしかし、そのめくるめくインストの世界は、淡々としているようでいて、時にギラギラとした鋭さを感じさせる。これってデジタルを駆使したプログレじゃん。この演奏力があれば、クリムゾンの前座できるじゃん。なんて想像。2003年フジ初日のレッドマーキーをモニター越しに観たのだが、このときは冷たい雨に打たれながらアンダーワールドを待っていたので、実質BGM状態。なぜもっとしっかり観なかったのかと、今更ながらに後悔した。



17:50 - 18:25 The Back Horn

 観るのは今回が初めて。4人編成でストレートでごつごつしたロックを展開。頭がぼさぼさで白いシャツのヴォーカルくんは、エレカシの宮本を思い起こさせる。そのヴォーカルはまさに泥臭く、これがそのままバンドのカラーになっていると感じた。まもなくリリースされるという、ニューシングルも披露。バンドの演奏力そのものは精度が高く、もしヴォーカルが別の人なら、全くカラーの異なるバンドになれるだろうな、なんて感じた。



18:45 - 19:20 Rosso

 始まる前からオーディエンスのテンションは高く、セットチェンジ中もフロアはすし詰め状態に。そしてバンドが登場したその瞬間から、場内は興奮の坩堝と化す。『アウトサイダー』での照井のベースが更に場内の危うい雰囲気を後押しし、以降は一気に突っ走る。このバンドの武器は、高い演奏力やメンバーの存在感もさることながら、醸し出される雰囲気もそのひとつだ。ブランキーやミッシェルが思春期だったならば、Rossoはその後を受けた大人のバンドだ。激しい音を出しているにもかかわらず、どこか落ち着いた安心感のある雰囲気が漂っている。


 そしてクライマックスになったのは、やはり『1000のタンバリン』だった。印象的なリフで始まり、キャッチーで親しみやすいメロディでありながら決して軽さはなく、どっしりとしている。そして、オーディエンスの合唱を誘発させるサビ。U2のボノが言うように、バンドには必殺となる曲が必要なのだということを、改めて認識させられた。私はつい1ヶ月ほど前にFactoryの収録でライヴを観たばかりなのだが、そのときからもまた更に引き締まってきているというか、密度が濃くなってきている気がする。

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19:50 - 20:20 Buffalo Daughter

 観るのは2000年のフジ3日目ホワイトステージ以来。Rosso終了後にフロアから人が一斉に引いてしまったこともあってか、長めのインターバルの後に登場した。ドラムが初期メンバーの女性だそうで、一緒に演奏するのは10数年ぶりなのだとか。前半は短い曲を刻んでいて、ムーグ山本が奥の方で奇声を発し、やがて前の方ににじり寄ってきてシャウト。シュガー吉永と大野由美子は、向かい合う配置でコーラスする。後半はインスト重視の大作となり、幻惑されるような不思議な感覚に陥った。



20:40 - 21:10 UA

 観るのは99年のフジ2日目グリーンステージ以来だが、このときは半分は寝ていた。その後も彼女はまめにフジに出演してくれているのだが、他のアーティストとかぶっていたり、冷たい雨に負けたりで(汗)、つまり実質今回が初。バンドはギター、シタール、スティールドラム(バッファロー・ドーターの大野由美子が担当)、ホルンと、かなり異色の編成。そしてこれらの楽器の演奏と相俟った彼女の歌は、脱文明というか、原始~自然へと還っていくかのような、妖しくしかし美しいステージに。彼女のクセのある声はもとより、その息遣いまでもが観ている方にまで伝わってくるようだった。こういう世界観なら、ヘヴンやオレンジコートの方にエントリーされるわけだと納得する。



21:30 - 22:00 くるり

 観るのは2003年1月のマニック・ストリート・プリーチャーズの前座以来。ドラムのクリストファーが脱退し、オリジナルメンバーは3人と聞いていたが、ステージには5人いる。ドラムとキーボードがサポートなのかな。さてライヴは岸田のマイクチェックから始まり、これがそのまま曲の歌い出しに。岸田の声は高音になるとかすれるし、演奏もバンドとしてのコンビネーションが今ひとつマッチしていないように見えるのだが、もしかするとこれがこのバンドの魅力なのだろうか。MCでも特にチャリティーには触れず、正月も働いていただとか、他愛もない内容。疲れてたのかな?








 計6時間にも渡る長丁場のイベントとなったが、各アクトの演奏時間は約30分程度という、コンパクトなものになった。それでも随所に見どころはあったのだが、やはり7組は詰め込みすぎだったと思う。Zeppは6組、AXに至っては5組だったのだから、1組をAXの方に回すようなことはできなかったのだろうか。それと、私は2階席で観ていたのだが、途中から明らかに2階席のチケットを持っていない客が入って来て、座り込んだり飲み食いしたりしていて、少し嫌な気分になった。ルール守れよ。



 今回のイベントは、冒頭にも書いたように全国6箇所で開催された。出演アーティストはもとより、スタッフも皆ボランティアだそうで、チケット代やグッズの売り上げ、浮いた経費などをまるまる集約して、合計で2000万円くらいの義援金として寄付できるそうだ。被災に遭った方々には少しでも早く復帰してほしいと願うばかりだし、この日イベントに集まった人は、夏にはまた苗場で会おうという想いを最後に確認したと思う(もちろん来られなかった人も、ね)。横浜会場での客出しのBGMは、『田舎へ行こう』だった。




(2005.1.16.)



















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