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シド・アンド・ナンシー(1986年)

シド・アンド・ナンシー(1986年)

のベーシストであり、わずか21歳にして亡くなったシド・ヴィシャスと、恋人のナンシー・スパンゲンの半生を描いた伝記的作品だ。シドを演じるのは、『レオン』『エアフォース・ワン』等の悪役を始めとして渋い演技が印象的な、だ。

映画は、シドがセックス・ピストルズに加入するところからスタート。ほぼ同じくしてナンシーと知り合い、2人は行動を共にする。ピストルズは過激な曲と過激な発言で旋風を巻き起こすが、アメリカツアー中にバンドは空中分解し、あっけなく解散。シドはその後ソロとして活動するも、もともと満足に楽器も弾けず、歌がうまいわけでもない。そして常にドラッグを摂取し続け、やがてはアーティストとしての活動もままならなくなる。そのうち誤ってナンシーを刺してしまい、ナンシーは帰らぬ人に。その4ヵ月後、ドラッグの過剰摂取のため、ナンシーの後を追うようにしてシドも亡くなってしまう。ナンシーは20歳だった。

伝記的作品とはいえ、内容がどこまで事実に即しているかはもちろんわからない。映画のシドの方がオーバーすぎるのかもしれないし、あるいは現実のシドの方がもっと過激だったのかもしれない。ともあれゲイリーは、これがデビュー作とは思えないほどの圧倒的な存在感でシドを演じる。ピストルズのメンバーやマネージャーのマルコム・マクラーレンを演じる人も当然いるのだが、ここではシドの引き立て役になっている。劇中には演奏シーンもいくつかあって、シドがソロになってから歌う『My Way』『I Wanna Be Your Dog』は、実際にゲイリーが歌っているようだ。

しかし、酒とドラッグに溺れ、死に急いでいるシドとナンシーを見ると、「破滅」ということばしか浮かんで来ない。この2人は、何のために世の中に生を受けたのか。というか、この2人にとっては、世の中には自分たちの居場所がなく、酒とドラッグによって向こう側の世界に行くことでしか、心が休まらなかったのかもしれない。

ポーグスが音楽を、エンディングで流れる主題歌をジョー・ストラマーが担っている。ナンシーの友人役で、コートニー・ラヴが出演。彼女にとっては、キャリアのほぼ最初にあたるようだ。シドとナンシーが最後に生活拠点とするのがニューヨークのチェルシーホテルだが、下見に来た紳士をえんじているのがなんとだった。

そんなシドのことを、「人生を見切った人」「上手に幸せを追求した人」と表現した人がいる。『シドと白昼夢』という曲を書き、また『ここでキスして。』では、「現代のシド・ヴィシャスに手錠をかけられるのは只あたしだけ」と歌った、だ。

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