Summer Sonic 2003/Day 1-Vol.3 The Jon Spencer Blues Explosion/Devo







ほとんど毎年のように来日している、お馴染みジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン。個人的にも何度か観ている連中だが、ことサマーソニックとなると、あの因縁を思い出さずにはいられない。それは第1回のアウトドアステージで、セミのジェームズ・ブラウンが持ち時間を無視して大幅に延長してライヴをやってしまい、ジョンスペの演奏時間がたった10分になってしまったことだ。更に付け加えれば、私はこのときは会場近くのホテルで既に休んでいて、おまけに雨まで降ってきてしまったため、彼らのライヴは観ていなかったのだった。


 当の本人たちも、さすがにあのときのことは忘れてはいないと思うのだが、といってリベンジするんだという気負った様子などまるでなく、いつも自分たちがしている通りのライヴをこなしているといったたたずまいだった。序盤こそマイクの調子が今ひとつだったが(マイクを口に入れながら歌ってるんだから、トラブルも起こるか)、ジュダもラッセルも淡々と演奏を続け、切れ目ができないようにしている。『Wail』や『2 Kinda Love』といった「顔」的な曲が、惜しげもなく早くも演奏される。


 しかし個人的に狂喜したのは、昨年リリースされたもっかの最新作『Plastic Fang』からの曲だった。『Ghetto Mom』『She Said』『Sweet N Sour』といった、シンプルでストレート、かつキャッチーな曲が、メドレー状態で次々に披露される。ロックンロールを基調としつつも、ヒップホップやラップの要素を併せ持つのがジョンスペの持ち味かもしれない。だけど個人的には、このバンドは直球一本槍でガンガンに押し捲るべきだとずうっと感じていて、そうした意味で『Plastic Fang』は快心の一撃だったのだ。そして3人のコンビネーションが、これまた見事だ。まさに阿吽の呼吸というか、互いが互いを信頼し切っていればこそ成し得るような劇的な空間が、生み出されていたように思った。

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 ジョンスペの健在ぶりをしっかと受け止め、メッセイベントホールに移動。当初はアリーナのみの開放だったのが、スタンド席も開放されていたので、これ幸いとそちらに陣取ることに。もちろん目当てはディーヴォなのだが、早く着きすぎてしまい(笑)、まだキック・ザ・カン・クルーのライヴ中だった。途中かなり長いMCがあって、オレたちは毎日が勝負なんだとか言い放つ。なんでも3ヶ月連続でシングルをリリースするそうで、その気合いの入ったライヴには、多くのファンが酔いしれていた様子だった。


 そしていよいよディーヴォの登場する時間に。しかしなかなか始まる気配がなく、落ち着きなく時計をちらちら見てしまう。やがてこのステージの進行を務めているブライアン・バートン・ルイスが、ポリシックスの林くんを伴って登場。林くんは興奮していて金切り声で叫んでいて、もういっぱいいっぱいなのでは(笑)。ポリシックスはこの翌日大阪で日中ライヴをするはずで、とすればもう移動しちゃったかななんて思っていたけど、やはりディーヴォを見ずして動くことはできなかったようだ。





 まずはステージ後方に数分程度の映像が流れるが、これだけで場内はもう興奮の坩堝に。長らく活動停止状態だったのが、今年になって突如活動が表面化。ここ日本ではとなると、初来日は79年で(しかも、なんと武道館で公演!)、そもそも来日自体80年以来実に23年ぶりなのだ。だけど、この日この場に集まった多くの人は、そうしたことを伝聞や活字でしか知らず(もちろん私もそう)、まさかホンモノが観れるなんて~、という想いがこみ上げてきて当然なのだ。


 そしてステージ左の袖の方から、やっとメンバーが登場。全員が70's当時をそのまま彷彿とさせる黄色いツナギ姿で、頭にはもちろんロールパンのような(笑)形をした赤い帽子が。し・か・し・・・、全員爺さんだー(笑)。何人かは、以前はスリムだったはずの体形も、ものの見事に横幅たっぷりになっている(笑)。これでちゃんとライヴできるんだろうか。





 しかし、それも杞憂。というか、下衆な勘繰りをした私が愚かだった。確かに体形は変わった。風貌も変わった。老けた。太った。しかしヴォーカルは、70's当時にレコードに吹き込まれた声と変わっていない!それどころか、ナマで聴く分余計に瑞々しく、透き通っているように感じる。きっと、セルフコントロールのたまものに違いない(シガレッツ&アルコールのリアムにも、見習って欲しいくらいだ)。そしてバンドの演奏力も、異常なまでに高い。曲そのものが持つパワーだけに頼らず、今現在の自分たちの力量を以って、観る者に迫ってくるのだ。


 看板曲『Satisfaction』。初めて聴いたときは、なんじゃあこりゃあとびっくりし、「間違った」んじゃないかと思った。しかしこの壊しっぷり、崩しっぷりは、こんにちあまた溢れ返っているカヴァースタイルの、プロトタイプに位置してはいないか。更には『Uncontrollable Urge』の、「いえーいえーいえーいえーいえいえいえいええええええっ♪」という、一聴するとおばかな歌い出しも健在。しかしパフォーマンスの精度は恐ろしいほどに高く、「おばかな」という表現を撤回せねばならぬほど、この人たちはカッコいい。


 「ボクタチハ ニンゲン デスカ?」という、日本語でのMC。ここでほんとうなら「ウィーアーディーヴォ!」と答えなくてはならないところだが、オーディエンスのリアクションは「イエ~」だった(嗚呼)。そして『Jocko Homo』となるのだが、間奏のときに、ヴォーカルの人がメンバーの衣装を次々に破いていく(紙製だったのかな?)。半袖短パンの身軽な姿になり、そしてステップを刻むメンバーたち。なんでこんなにやる気満々なのかと、観ている方が圧倒されてしまうようなエネルギッシュなライヴだ。





 こうして夢のようなディーヴォのライヴは約1時間以上にも及び、更にはアンコールもあって、大満足の内容だった。この日、アウトドアのトリはブラーだったし、インドアのトリはトラヴィスと、いずれ劣らぬ実力アーティストばかりが揃った。個人的には、ブラーを観るかディーヴォを観るかで迷っていたこともあったのだけれど、最終的にディーヴォを選んだのは大正解だったのだ。











(2003.8.30.)
















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