Fuji Rock Festival'04/Day 3-Vol.2 早川義夫・佐久間正英/The Stills/Jet







フィールド・オブ・ヘヴンに移動し、早川義夫・佐久間正英を観る。ヘヴンのまったり空間に、この人の歌声やキーボードの音、そして独特の詩の世界は合っていたと思う。がしかし、私がこのステージで最も観たかったのは、佐久間正英のプレイだった。早川義夫のライヴは以前に1度観ているのだが、そのときにも佐久間はギターで参加し、好サポートを見せていた。それが今回は早川・佐久間名義になっているので、もっと違うパフォーマンスになるのではと、期待していたのだ。私が観た感じでは、前に観たときとほとんど変わらないパフォーマンスで、ちょっと拍子抜けしてしまった。


オレンジコートに移り、N.R.B.Q.を観ようとした。がしかし、予定時間になっても一向に始まる気配がなく、待っていてじれてきた。どうやらステージの進行そのものが遅れていた様子で、10分ほど遅れてようやく開始。がしかし、この後の脳内スケジュールでレッドマーキーに戻らねばならず、結局演奏は5分も観ることなくその場を離れた。





オレンジコートからレッドマーキーへ。会場内を端から端へまるまる横断する形で足を進め、20分近くかかってやっとマーキーにたどり着き、ザ・スティルズを。飾らない、シンプルでストレートなギターロックという感じだが、今ひとつパンチに欠ける気がした。毎年レッドマーキーは海外の若手バンドが充実していて、そしてその大半はUK勢。またUKギターバンドかと思いきや、彼らはカナダ出身だった(笑)。





フジロックは、続けて参加しているとアーティストが成長するのを体感できる場でもある。象徴的なところでは、'02~'03のザ・ミュージックがそうだったろうし、そして昨年から今年の1年の間に劇的に成長を遂げたバンドといえば、ジェットで異論はないだろう。昨年は3日目のレッドマーキーに出演していて、そのときはまだアルバムがリリースされてもいなかった。ライヴは好調だったし、その後日本では曲がiPodのCMに起用されて大ブレイク。1月の再来日公演も即完売の勢いだった。そしてこうした騒ぎになっているのは日本だけでなく、欧米でも同じような状況だったに違いない。


グリーンステージに彼らが姿を見せたときに、昨年のライヴが頭をよぎることはなかった。この1年の間に世界各地を転戦してきたであろう、その経験が風格になってにじみ出ていて、その今の彼らのプレイをしっかりと受け止めるべきだと思った。序盤はビートの効いたまさにジェットらしい曲を連発。このたたずまいは開放された空間よりもライヴハウスのような密閉された空間向けの気がしていたのだが、どっこいこれがグリーンでもしっかりと通用している。中盤ではメロウなバラードを披露し、今後はこうして音楽の幅を広げていくのかななんてことも感じた。


そして。


ヴォーカルのニックがタンバリンを手にして軽く鳴らし、これだけで場内はざわめき出す。あの曲、あの瞬間、『Are You Gonna Be My Girl』が放たれるという期待感が充満しているのだ。低いベースラインのリフで、まずは場内が沸き立ち、暴れ出す。そしてサビに差し掛かったときだ。バンドは演奏をぴたりとやめ、ニックはオーディエンスを煽る。来い!・・・もっと来い!・・・もっと騒げ!・・・とでも言っているかのように。そして例のフレーズをさらりと歌い、ジャッジャッジャーッという印象的なリフが炸裂する。


とてもまだアルバム1枚きりのバンドとは思えないライヴをやってのけたジェットだったが、彼らは今のあり方に必ずしも満足していないのではないかという気もした。求められハイライトになっているのが、結局『Are You Gonna ~』だという現状も、いい意味で活用してはいるが、あまり居心地のいいものではないのかもしれない。ハード路線一辺倒から脱し、もっと幅広い、もっと懐の深い音楽を表現できるようになったとき、彼らはより一層魅力的に映り、またロック史にその名を刻めるバンドになるはずだ。


(2005.2.1.)
















Back(Day 3-Vol.1) | Next(Day 3-Vol.3)





Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.