Fuji Rock Festival'02 Day 3-Vol.3 Gomez/Jane's Addiction







フィールド・オブ・ヘヴンから戻って来る人と、スーパーカーを観終えた人とで、ホワイトの出入り口はごった返していた。通過するのに20分以上も要し、そして少し前まではあれほど青かった空は、雲で覆われていた。ときおり、雨がぱらぱらと降ってきた。


実は、もっと深刻な事態があった。先程ヘヴンに行ったときには飲み物類は全て売り切れていて、ホワイトでもやはり売り切れになっていた。私がわざわざ人ごみの中にまぎれていたのは、水分を調達するためだったのだ。だけど売り切れ状態はグリーンに行っても変わらず、結局レッドマーキーの入り口前でやっと入手。1日につき、2リットルのペットボトルと500ミリのペットボトルをそれぞれ持参し、それなりに備えはしてきたつもりだったが、この頃にはそれらもほとんど飲み尽くしていて、真剣に身の危険を感じた。'98の2日目にも同じようなことがあったが、まさか苗場でこんなことになろうとは、ちょっと想像できなかった。


正直言うと、3日目は例年通りに少し人が減って、動きやすくなるだろうと思っていた。だけど今年は、3日目になってもすごい人の数だ。イベントとしては、たくさんの人が集まってくれたことは喜ぶべきことだと思うけど、それを受け入れる器としての会場は、もはや限界に達していたと思う。おかげでクーパー・テンプル・クロウズのライヴは、その場にいたにもかかわらず、私の中にはほとんど印象に残らなかった。





さて、確保した水分でノドを潤し、ひと安心してゴメスのライヴに臨む。私は初期の彼らを地味に感じていたのだが、しかしそれはCDでのことで、ライヴの場においてはよりナマナマしく、そしてよりアグレッシヴなのだということを、'00のレッドマーキーで観て知った。それから2年。今度はホワイトに"格上げ"されての生還だ。


彼らはなぜか日本語を連発(しかも、カンペ覗き見というのがバレバレ/笑)。「アリガトウ」「イクゼ」といった具合で、なんだか微笑ましい。バンドはツインギターにツインヴォーカル・・・いや、曲によってはヴォーカルが3人にもなるという、変則的かつユニークな編成だ。新作はよりポップになったが、それでも彼ら本来の持ち味であるソフト感は損なわれていない。アルバム1枚だけで消えてしまう短命なギターバンドが後を絶たない中、ゴメスは自分たちが生き残るべき道を見つけ、それを踏みしめながらじっくりと歩んでいるのかもしれない。





陽が落ちてきて、そしてグリーンではジェーンズ・アディクションのお出ましとなる。テレヴィジョンがフジに来たのもすごいが、ジェーンズが来たのもそれに匹敵するくらいすごいことだと思う。複数のバンドを連れて全米を廻ったロラパルーザも、レッチリのフリーを迎えての97年の再結成劇も、ここ日本においてはまるでリアリティがなかったのだ。


ペリー・ファレルは紫のコートをまとい、そして大きな羽のついたシルクハットをかぶって登場。こういうド派手な衣装を、いとも簡単に着こなしてしまうのだからさすがだ。ワインをボトルのままラッパ飲みし、そしてあの甲高い声で歌う。予想してはいたが、ペリーの声は野外ではより瑞々しく響き、気持ちよく聴こえる。そしてペリー以上にびっくりさせられたのが、デイヴ・ナヴァロの存在感だ。早くも上半身裸で、ギターをかきならしながらステージ上を縦横無尽に走り回る。ギタリストがバンドの華となり、見せ場を作るのはままあることなのだが、しかしこのデイヴの暴れようは桁違いだ。


デイヴは、一時期レッチリのメンバーとして活動し、『One Hot Minute』の制作に参加し、フジロック'97にも参加している。フジのときはバンド内部の軋轢がひどかったようで、この後レッチリは活動停止状態になり、デイヴはフリーを伴う形でジェーンズに生還。その後レッチリにはジョン・フルシアンテが復帰して、レッチリのバンド史においてはデイヴが在籍していた時期そのものが抹消されかかっている。


だけど、ちょっと待ってくれよと私は言いたい。『One Hot Minute』はレッチリらしくない作品かもしれないが、ちょっと見方を変えれば、レッチリにジェーンズの要素が合わさった、ある意味画期的な作品でもあると思うのだ。ジョンが脱退したときにデイヴがいなければレッチリは存続しえなかっただろうし、そして後にジェーンズに生還したデイヴにとっても、レッチリにいた時期というのは必ずしも無駄ではなかったはずだ。つまりはこの時期というのは、レッチリとジェーンズの2バンドにとってターニングポイントになったと思うのである。あの時期があったからこそ、ジェーンズそしてレッチリも、こうしてフジの地を踏むことができているのだ。





約1時間程度のライヴでいったんメンバーは下がるが、アンコ−ルとして再登場。そして飛び出したのは、必殺の『Jane Says』。デイヴはペリーに寄り添うようにしてステージのへりに腰掛け、セミアコのギターを弾く。ゆったりした曲調が夜の苗場に響き渡り、先ほどは暴れまくりで熱く激しいステージだったのが嘘のように静まり返り、そして数万のオーディエンスは、ただただこの曲に聴き入っていた。

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(2002.8.12.)
















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