Fuji Rock Festival'01 Day 1-Vol.3 Manic Street Preachers







日が傾き、天空に漆黒が広がり始め、フジロック第2幕が始まる。そしてグリーンはマニック・ストリート・プリーチャーズが姿を現す。感動的だった6年ぶりの来日から更に2年半が経ち、新作では初期を思わせる闘争モードになった彼ら。その姿を間近で確認せんと、ここで私は今年初めてグリーンのモッシュピットに身を投じる。





スタートは『Found That Soul』だった。歓喜よりも緊張感の方が上回る、彼らの新たな叫びであり、挑戦だ。間奏でジェームスは不器用にターンし、ニッキーはめちゃめちゃ長いシャツ姿で暴れ回っている。ステージ右後方にはウェールズの旗が見える。続いては『You Stole The Sun From My Heart』。新作一辺倒ではなく、どうやら新旧織り交ぜてのセットリストになるらしい。前作からの曲を演られると、思わず感傷的になってしまう。


そして次はなんと『Faster』だ!今や本国では国民的バンドなのに、アリーナクラスで演奏しているのに、ここ日本では前回の来日はライヴハウスクラスだった。最終となったOn Air Eastは、1000人も入らないハコだった。そこでも彼らはこの曲を演ってくれた。そのときのことを思い出さずにはいられなかった。ほんとうはこの野外ステージこそが、たくさんのオーディエンスこそが、彼らにふさわしいんだ。今まではTVで見るしかなかった野外フェスでのマニックスが、今ここで行われているのだ。


『Motorcycle Emptiness』や、『Baby Love』からメドレーで歌われた『Motown Junk』などのファーストからの曲には、やはり場内のどよめきが一段と増す。初期の頃と今とではまるで音楽性が変わってしまい、なのに初期の曲を演奏することに違和感を感じていたのが2年半前の私なのだが、不思議と今回はその違和感を感じない。今の彼らは、そういった細かいことなんてはるかに凌駕したレベルにいるのだ。つまり、曲そのものが持つパワーに依存しているのではなく、今の彼らが今のスタンスで演奏している。だからこそ緊張感に満ちているし、観る側聴く側に説得力を以って迫ってくる。





『Design For Life』の後、ジェームスひとりのアコースティックセットになる。ここで歌われたのが『Raindrops Keep Falling On My Head/雨にぬれても』だ!バート・バカラックのカヴァーで、原曲は誰しも1度は耳にしたことがあるであろう曲。私はボスニア・チャリティ・アルバム『Help』で聴いたことがあるけど、それがまさかここで持ってこられるとは。


そして続いては、2年半前には聴くことができなかった『The Everlasting』!静かでいながら徐々に聴く側の心に染み込むように伝わるこの曲こそが、マニックスが前作『This Is My Truth Tell Me Yours』で打ち出した方向性の象徴なのだと思っていただけに、狂喜せずにはいられなかった。しかしジェームスはほんとうにいい声をしている。アコースティックでそしてたったひとりで、これだけの数のオーディエンスを魅了できるアーティストはそうはいない。





再び3人編成に戻り、今度は『Everything Must Go』や『Kevin Carter』といった、マニックスの顔的な曲が放たれる。いや、ちょっと待て。私が聴き込んでいるからそう思うだけなのかもしれないけど、ここまでほとんどの曲が名曲、代表曲のレベルにあったのではなかったか。地獄を見た男たちは、そして地獄から生還した男たちというのは、こうまでたくましくなれるものなのか。こうまで頼もしく見えるものなのか。持続しっ放しのこの緊張感は、昨年のブランキー・ジェット・シティーのラストライヴを思い出させる。


ラストはやっぱり『You Love Us』だった。ニッキーはほとんどベースを弾かず、ステージ向かって右のところまでじりじりと歩き、そこで踊る。そしてオーディエンスをあおる。ここまで持続してきた緊張感をついに解き放ったのか、演奏が終わった後、ショーンとニッキーでドラムセットをひっくり返して叩き壊す。壊す。これ2年半前の最終公演でもやってたけど、これで終わりってときはいつもそうするのかな。

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(2001.8.2.)
















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