Fuji Rock Awakening Vol.8 Johnny Marr's Healers







フジロックでは、セットチェンジには約40分の時間が割かれている。'99以降はステージ数も大幅に増えたが、このために余裕を持って各ステージ間を行き来でき、より多くのアーティストのライヴを楽しむことができる。食事タイムにも充てられるし。そして夕方の時間帯は、ちょうどセットチェンジと日没が重なるようになっている。つまりこの日で言うと、ソニック・ユースのときはまだ空が青いが、ジョニー・マーが登場する頃にはすっかり陽が落ちていて、まるで日中とは別世界のような異空間の中でライヴを楽しむことができるのだ。








さてそのジョニー・マー。今更言うまでもなく80'sはスミスのギタリストとして数多くの伝説を作った男。がしかし、スミス脱退後はザ・ザに参加したり、バーナード・サムナーと組んでエレクトロニックというユニットを興したりして、それはそれで聴きどころのある活動ではあったが、何か元スミスという金看板を背負わされるのをかわそうとしているように見えてならなかった。仕方ないのかもしれないが。それが今年になって突然、自分がフロントに立ち、曲を作り、更にはヒーラーズなるバンドを従えてライヴまでやってしまった。


グラサンにジャージという姿でステージに現れ、そして早速ギターをかきならすジョニー・マー。モリッシーは2度日本の地を踏んでいるが、彼が日本でライヴをするのはこれが初めてだ。その姿を観れたことだけである種の感慨が湧き上がってきてしまう。


ライヴはもちろんスミスナンバーが演奏されるはずもなく、今回新たに書き下ろした曲で進められる。自分で歌いながらギターを弾くジョニー。その姿も、そして音の方も、なんだかオアシスの兄貴分?のような感じで、正直言って序盤はキツく感じた。ブリットポップも終焉してしまった今になってこんな音演っててもなあ、という気がした。


ヒーラーズのメンバーだが、bは元クーラ・シェイカーのアロンザ。ジョニーはクーラ解散の報を聞き、即アロンザに連絡を入れて自分がこれから興す新たなプロジェクト=ソロ活動に招き入れたそうだ。そしてdsはリンゴ・スターの愛息ザック。リンゴ・スター・オールスターズでも何度か来日し、イーグルスのジョー・ウォルシュやグランド・ファンク・レイルロードのマーク・ファーナーなどのビッグネームに混じりつつ、父と一緒にスティックを握りドラムを叩いたザック。どうしても「リンゴの息子」という肩書きがつきまとう宿命にあるが、今回のヒーラーズ参加は彼にとってもいいきっかけになるかもしれない。


そうした有名どころのバンドメンバーに混じり、しかし実は最も存在感を放っていたのは、女性パーカッショニストだった。元スミスの郷愁をステージに浴びせるオーディエンスと、それを受けるでもなくかわすでもなくはっきりしない状態でライヴを続けていたジョニー。しかし終盤、ジョニー・マーズ・ヒーラーズがライヴバンドとしてフジロックの野外ステージを自らの土俵に引き込んだのは、間違いなく彼女のパーカッションソロにあった。そのリズムに乗せられるようにして、グラサンをはずし、ステージの両端に行き、ギターを提げたまま両腕を上げ、足踏みをし、オーディエンスを煽るジョニー。アルバムの正式発売は来年になるとのことで、今後の活動が楽しみである。

The Smiths/Morrisseyページへ



(2000.8.16.)
















Back(Vol.7) | Next(Vol.9)





Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.