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U2 The Joshua Tree Tour 2019@さいたまスーパーアリーナ

公開日: : 最終更新日:2019/12/06 U2

U2 The Joshua Tree Tour 2019@さいたまスーパーアリーナ

開演前、ステージ向かって右のスクリーンには、詩や散文などが流れていた。ほとんどが英語だったが、時折日本語の文章も流れた。小林一茶、和泉式部、萩原朔太郎、松尾芭蕉など。最後が、宮沢賢治の「雨にもまけず」だった。

予定を15分ほど過ぎたところで客電が落ち、SEのウォーター・ボーイズ『The Whole Of The Moon』が流れ始める。曲が終盤になったところで、まずラリーが登場。花道を歩き、サイドステージのドラムセットにおさまる。そして、あの電撃のイントロ。『Sunday Bloody Sunday』だ。続いてジ・エッジが登場し、ギターのリフを弾き始める。アダム、ボノも加わって、ライブはスタートした。

前日のセットリスト情報は掴んでいたが、ステージセットや構成にまでは踏み込まずにいた。だから、このような出だしだとは、思ってもみなかった。さいたまスーパーアリーナが、ライブハウスに生まれ変わった。この瞬間を、13年待った。長かったはずのインターバルが、一瞬のように思えてしまった。

続くは『Gloria』で、前日と変えてきた(前日は『I Will Follow』)。個人的に、U2のライブは93年のZoo TVツアーから数えて4度目になるのだが、この曲をナマで観るのははじめてかもしれない。そして『New Year’s Day』では、ジ・エッジはエレクトリックピアノとギターを使い分けていた。アダムもジ・エッジも、1曲毎に楽器を交換している。

『Bad』でボノは「コンニチハ」と挨拶し、長いMCを。その中で、前日にアフガニスタンで不慮の死を遂げた中村哲さんに哀悼の意を示してくれた。この曲は長尺で、メリハリのない一見地味な曲調だが、聴けば聴くほどに味わいが出るというか、深みが感じられる不思議な魔力を持っている。更に『Pride』 だ。もとはマーティン・ルーサー・キング牧師に捧げた曲だが、ここでは中村さんに捧ぐ曲としても機能していたはずだ。ショウは、ここで最初の沸点に達した。

4人が横一列に並び立ち、拳を突き上げているところに、イントロのSEがうっすらと流れ出した。彼らはメインステージに戻り、まずジ・エッジの電光石火のイントロ、そしてアダムとラリーのリズム隊が加わり、ボノが歌い出した。『Where The Streets Have No Name』。ここからがショウの第二幕で、アルバム『The Joshua Tree』全曲演奏だ。

『I Still Haven’t Found What I’m Looking For』『With Or Without You』と、U2のマストソング3曲をアルバム通りに聴ける醍醐味と言ったらこの上ない。バックドロップの巨大スクリーンはモノクロの映像で、ヨシュアの木が生えているというアメリカ南西部の光景だろうか。ステージは広いが、4人はその中心部に小さくまとまって歌い演奏している。

映像は『Bullet The Blue Sky』からカラーになり、そして演奏中のメンバーをモノクロで映すようにもなった。『In God’s Country』の神々しいリフが、ナマで聴ける日が来るとは思わなかった。『Exit』『Mothers Of Disappeared』は、改めて聴くと思った以上にダイナミックでスケール感に溢れていた。このアルバムが持つ凄みは、序盤の3曲だけではないんだよと突きつけられた気がした。

ステージは、横にも花道が伸びていた。ワタシの席は向かって右側のスタンド席つまりアダム側で、アダムとボノは何度か先端近くまで来てくれた。

今回のサイドステージは、ヨシュア・トゥリーを型どっている。アルバム全曲演奏が完遂されると、4人は再びそこへ足を進め、そして『Desire』を(前日は『Angel Of Harlem』だった)。演奏を終えると、まず3人が先に引き上げ、ラリーが最後まで残ってドラムを叩いた。ラリーは戻り際、スティックをフロアに投げ入れていた。

前日はFacebookで世界に生配信されたアンコールだが、この日は通常モードに。しかし、巨大スクリーンの映像のきらびやかさが発揮されるのはここからだ。既にオーディエンスがイントロを合唱する中で『Elevation』がスタート。続く『Vertigo』は、そのタイトルの通りめまいが起きそうな映像が繰り広げられた。

『Even Better Than The Real Thing』のとき、ボノがラリー、アダム、ジ・エッジを紹介。『You’re the Best Thing About Me』はアコースティックバージョンで、切々と歌うボノの姿が印象的だった(前日は『Every Breaking Wave』)。『Beautiful Day』では、やっとジ・エッジが右の花道まで来てくれた(笑)。しかし、なんとまあ決定的な曲の多いことか。

『Ultraviolet』は、この日何度目かのハイライトになった。女性の力について歌った曲だそうだが、映像は国内外の女性の写真や肖像画がランダムに表示された。恐らく日本仕様になっていると思われ、冒頭でいきなり市川房枝が、後半では先月亡くなられた緒方貞子さんが、ラストでは小野洋子(カタカナではなく漢字で表記されていた)の写真が映し出された。個人的には、緒方さんの写真が出たときに感慨深いものを感じた。同時多発テロの翌年のスーパーボウルといい、U2はいつも絶妙な表現をやってくれる。

『Love Is Bigger Than Anything In Its Way』を経て、オーラスは『One』。最後、映像に「日本」の文字が浮かび上がり、やがて中心が赤いマルになり、外側が真っ白に。つまり、日の丸になった。13年前、ボノが花道で日の丸の旗を降ってライブをスタートさせたのを思い出した。

セットリスト
Sunday Bloody Sunday
Gloria
New Year’s Day
Bad(with “The Boxer” snippet)
Pride (In The Name Of Love)

アルバム『The Joshua Tree』全曲再現
Where The Streets Have No Name
I Still Haven’t Found What I’m Looking For
With Or Without You
Bullet The Blue Sky
Running To Stand Still
Red Hill Mining Town
In God’s Country
Trip Through Your Wires
One Tree Hill
Exit
Mothers Of The Disappeared
Desire

アンコール
Elevation
Vertigo
Even Better Than The Real Thing
You’re The Best Thing About Me
Beautiful Day
Ultraviolet (Light My Way)
Love Is Bigger Than Anything In Its Way
One

当然といえば当然だが、アンセムが金太郎飴状態で次から次へと繰り出される、極上のライブだった。そして何より、バンドがワールドワイドなステータスを獲得した決定的なアルバム『The Joshua Tree』の全曲演奏ツアーで日本に来てくれたことが、とても嬉しかった。このツアーはリリース30周年に当たる2017年に敢行していて、去年は新譜に沿ったツアーをしていたのに、逆行してツアーを行うなど、ふつうに考えてありえないことだ。なのに、それをしてくれたのだ。

ボノとアダムは来年、ラリーとジ・エッジも再来年には還暦を迎えるのだが、そうした老いを感じさせない、まだまだ現役バリバリの姿を見せてくれた。先人たちが70代になっても気を吐いていることもあるが、にしてもこの現役感はいい意味で異様だ。ことアリーナやスタジアムクラスでのライブでは、U2は最先端を行っている。そして、バンドとスタッフが一体になっての爆走は、これからも続いていくはずだ。

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