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ボブ・ディラン マイ・バック・ページズ

ボブ・ディラン マイ・バック・ページズ

河出書房から昨年暮れに出版された、ボブ・ディランの特集本を入手した。タイトルの「マイ・バック・ページズ」は、ディランの曲名からの引用だろう。

巻頭が菅野ヘッケルによる文章で、自身の体験を交えつつ、ディランの半生をコンパクトにまとめている。続いてのピーター・バラカンのインタビューでは、氏による少年期からの体験と、独特のクールな視点によってディランを語っている。

元ロッキングオン副編でスヌーザー主宰の田中宗一郎のインタビューは、当時のことが思い出されて面白かった。94年にディランが来日するときにディランを表紙にして特集を組みたいと提案するも、編集長の増井修に却下されて社長室で渋谷陽一とグチったとか。そのときの公演を自分で投稿していて、それがはじめてディランについて書いた文章なのだそうだ。

ワタシがロッキングオンを定期的に買って読むようになったのは93年秋からで、上記のタナソウが書いた文章も読んだことを覚えている。94年の来日は、ワタシにとってのディラン初ライヴでもあったからだ。タナソウだけでなく、渋谷も相当ディランに入れ込んでいるはずだが、雑誌作りについては編集長権限の方が強いという図式は、驚きだ。

出版社こそ違えど、「マイ・バック・ページズ」は2010年に青土社から出版された「現代思想」のディラン特集の続編であり、マイナーチェンジ版に位置すると思う。ヘッケルとバラカンがどちらにも載っているのをはじめ、アメリカ文学や詩的側面からの考察はどちらでもされている。ただし、「現代思想」は分厚く字数も多くやや難解なのに対し、「マイ・バック・ページズ」は薄くなり(笑)文体も読みやすいものが多い。巻末のディスコグラフィーも、コンパクトにまとまっている。

2誌の出版には約6年半の間があるが、その間ディランに起こった出来事の最たるはノーベル文学賞受賞だろう。「現代思想」では候補にあがっているという状態だったが、「マイ・バック・ページズ」では、受賞が発表され、ディランが受けるのか拒否するのか注目される中で受けることを表明したタイミングで制作されている。実際、何人かの執筆者は受賞の意義やメディアの反応に対する気持ち悪さなどを語っている。

確か発売時期は、先約を理由に本人が授賞式を欠席し、パティ・スミスが『A Hard Rain’s A-Gonna Fall』を歌った頃だろう。あのパティ・スミスですら緊張し歌詞を間違えて歌い直すという、ある意味貴重なシーンを見ることができたわけだが、それよりも気になるのはディランの「先約」だ(笑)。

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