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浜田省吾@横浜アリーナ 2016年11月19日

公開日: : 最終更新日:2022/12/18 ライヴ

浜田省吾@横浜アリーナ 2016年11月19日

昨年秋から‎行われた浜田省吾のツアーはホール会場だったが、今年秋からはアリーナ会場の全国ツアーになっている。しかし、横浜公演の前にあたる福岡公演が、浜田の急性声帯炎、急性咽頭喉頭炎の為に延期に。この横浜は開催すると発表されてはいたが、若干の不安を抱えて開演時間を待った。

定刻をわずかに過ぎたところで、客電が消えた。ステージを覆っていた幕には、国内外の観光名所が浮かび上がる。そして、幕が落ちたとほぼ同時に、演奏がスタート。浜田の原点と言っていい『路地裏の少年』だ。驚いた。続く『HELLO ROCK & ROLL CITY』では、お約束のサビで「ヨコハマ」を入れてくれ、場内の熱気は早くも最高潮に。心配されていたノドの調子だが、問題なさそうだ。

更にだ。『モダンガール』『ラストショー』と初期の代表曲を畳み掛け、『J.Boy』収録の『19のままさ』ときた。『終わりなき疾走』も、嬉しいセレクトだ。今回のツアー、去年リリースされた新譜『旅するソングライター』にリンクしているので、第1部は新譜の曲を重点的に演奏するものとばかり思っていた。それがまさかまさかのベストヒット連射で、しかもどの曲も古びていない。今の音として鳴っているのだ。ツアーの細かい情報をシャットアウトしていたとはいえ、いい意味で裏切られた。

ステージは、横に長く作られていた。多くのアーティストのステージは両サイドには鉄骨があるが、今回はそれがなく、なおのこと広大に感じる。バックドロップのスクリーンは更に横長で、通常はタイル地だが、曲により映像を流したりステージ上のメンバーを捉えるなどしていた。たぶん、プロジェクションマッピングを使っていたと思う。センターステージこそないが、その代わりステージ中央前方が少し客席に突き出ていて、浜田は曲によりそこでも熱唱していた。

ちょっとした小芝居もあった。ギター町支と浜田が横浜駅で電車を待ち、女性ファンが町支を取り囲んでプレゼントを渡し、ついでのように浜田にも渡す。そして2人は電車を待つのだが、浜田がこういう曲書いたんだといってアコギを弾きはじめ、バンド演奏のへとシフト。それが、以降浜田にとって重要なポジションを占める『MIDNIGHT BLUE TRAIN』だった。

そして、町支の長いイントロのリフを経て、『MONEY』へ。この曲、ライヴでは2コーラス目のある箇所で演奏をぴたっと止めて、(主に女性の)客に歌わせるのが定番なのだが、今回はそれがなく、原曲通りに浜田が自分で歌っていた。この後約20分の休憩に入り、バックドロップでは風景を主とした映像を流していた。

第2部は、静かな立ち上がり。アコースティックの『丘の上の愛』から『もうひとつの土曜日』となり、まだベストヒットが続くのかと思ったが、ここでいよいよ新譜からの曲へ。旅を感じさせる『マグノリアの小径』を経て、アッパーな『光の糸』からアルバムと同名の『旅するソングライター』へと続く。この2曲はペアで、浜田のキャリアに新たに刻まれた「顔」となりうる曲たちだ。映像はPVで、ホワイトバックを背に軽やかに踊る浜田と、ステージに立ち歌う浜田とがシンクロする。『旅する~』のPVは、世界各地を旅する浜田の姿があった。

バンドメンバーは、恐らく去年のツアーと変わっていないと思う。ステージ後方右から左に、オルガン&シンセサイザー福田、ピアノ、ドラムは元レベッカの小田原、竹内宏美&中嶋ユキノの女性コーラス2人、トランペット、トロンボーン。前列はサックス古村、ギター町支、ベース美久月、ギター長田という面々だ。町支や古村は浜田とは切っても切れない深い関係だが、一方で女性コーラスを組み込んでいるのは、今回のツアーの特徴とも言える。

そのコーラスのひとり中嶋と浜田とのデュエットになっているのが、『夜はこれから‎』だ。デジタル調のメロディーで、ふたりのヴォーカルにはエフェクトがかけられている。浜田によれば、2020年に向けてこの後ますますフィーチャーされていくであろう「東京」がテーマなのだそうだ。浜田はステージ前方のDJ卓を前にして歌い、間奏になると竹内、中嶋もコーラスのブースを出て前方に繰り出してくる。竹内の方がナチュラルで、中嶋は少し動きが硬かったように、ワタシには見えた。

そして、これまでのライヴならアンコールのときにやっていた客の年齢層アンケートを、この曲間ですることに。10歳以下からはじまり、最後は70代以上まで。カメラは、その年齢の客をアップで抜く。因みに、最も多かったのは50代だった。前回のツアーでは最多がぎりぎり40代だったそうだが、もうそろそろ50代がメインになるだろうなとは思っていた。あるいは、会場によってはまだ40代メインのところもあるのかな。

82年以降ツアータイトルに冠している同名の『ON THE ROAD』を経て、いよいよ『J.BOY‎』へ。今年2016年は浜田のソロデビュー40周年、アルバム『J.Boy』リリース30周年にあたる。プロデューサー岩熊によれば、浜田自身はこうしたキリ番にはさほど執着していないそうだが、スタッフを含めてみんなが一丸となる瞬間というのがあって、『J.Boy』はまさにその最たる作品だったそうだ。

町支、浜田、長田の3人が横一列でフロントラインを形成してトリプルギターでイントロを弾き、次いで古村が躍り出てサックスを吹く。浜田の歌が始まり、日本人の魂を鼓舞するかのような歌詞が、聴いていて胸に突き刺さってくる。間奏では、美久月のベースラインが冴える。もちろん、ドラムも、オルガンも、ピアノも、コーラスも、管楽器隊も。そして、もちろん浜田も。バンドが持てる全てを出し、ひとつに結集させている。まさに極上の瞬間だ。これ以上ない雰囲気に包まれる中、第2部が終了した。

アンコールは、なんと3回。ファーストは、新譜『旅するソングライター』の終盤にあたり、組曲風に演奏される4曲だ。3つの曲から成る『アジアの風 青空 祈り』だ。『Part1 風‎』はスロー、『Part2 青空』はロックナンバーでアニメの映像も結構過激、‎『Part3 祈り‎』はレクイエムのように響く。キャンドルは、今回はプロジェクションマッピングで表現していた。そして、再生を歌う『誓い』だ。この完成度の高さは、素晴らしい。

セカンドは『こんな夜は I MISS YOU』で始まり、『光と影の季節』‎~『I am a father』‎へ。『I am a father』‎では、年齢層チェックのときにフィーチャーされていた親子客が何度かピックアップされ、セッティングされている映像も親子や家族の表情などをランダムに映していた。そして、サードにしてオーラスは、少し意外な、でも締めくくりには相応しい『家路』だった。

‎セットリスト
(第一部)
1. 路地裏の少年
2. HELLO ROCK & ROLL CITY
3. モダンガール
4. ラストショー
5. 19のままさ
6. 悲しみの岸辺
7. DJお願い!
8. バックシート・ラブ
9. 今夜こそ
10. 終りなき疾走
11. MIDNIGHT BLUE TRAIN
12. MONEY
(第二部)
13. 丘の上の愛
14. もうひとつの土曜日
15. マグノリアの小径
16. 光の糸
17. 旅するソングライター
18. きっと明日
19. 夜はこれから
20. ON THE ROAD
21. J.BOY
(1st ENCORE)
22. アジアの風 青空 祈り part-1 風
23. アジアの風 青空 祈り part-2 青空
24. アジアの風 青空 祈り part-3 祈り
25. 誓い
(2nd ENCORE)
26. こんな夜は I MISS YOU
27. 光と影の季節
28. I am a father
(3rd ENCORE)
29. 家路

現在63歳の浜田だが、アリーナ会場で2部構成トリプルアンコール計3時間半と、とてつもないライヴをしてくれた。福岡延期の直後の公演でもあったので、もしかすると縮小セットになるのではとも予想していたのだが、この人がそんなことをするはずはなかったのだ。ステージに立つ以上は最高のパフォーマンスをしてみせるという、プロフェッショナルの姿勢を見た。そして、思った。今までも、今も、そしてこれから先も、浜田省吾は「still on the road」なのだと。

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