*

ミュンヘン(2006年)

公開日: : 最終更新日:2021/02/23 スティーヴン・スピルバーグ

ミュンヘン(2006年)

1972年にドイツで行われた、ミュンヘンオリンピック。開催中の選手村にパレスチナのゲリラ8人が忍び込み、イスラエル人選手11人を拉致。世界中に報道される中、人質となった11人は全員が殺されてしまう。これに対しイスラエル政府が取った手段は、特殊部隊を編成して報復することだった。

特殊部隊はヨーロッパに飛び、裏の世界に生きる情報屋から8人の居所を仕入れ、銃や爆弾などで次々に消して行く。当初は該当者だけを殺すようにしていたのだが、やがてゲリラ側も報復に訴えて抗争の規模は肥大化し、凄惨さの度合いを増して行く。

主人公は部隊のリーダー。人殺しなどしたことはないのだが、断れば自分の身が危なくなると判断し、任務を引き受ける。お腹に子を宿した妻を残し、愛国心のもと任務を遂行。徐々に殺人に対するためらいも希薄になり、やられたらやり返す的な思想に傾いていく。しかし、終盤では自分が狙う側から狙われる側に転じていることに気付き、疑心暗鬼に陥ってしまう。

部隊のリーダーに、『きみがぼくを見つけた日』などのエリック・バナ。誠意と狂気の狭間を行く難しい役をこなしていて、この人にとっての代表作と言えるかもしれない。仲間のひとりが、ダニエル・クレイグ。ジェームズ・ボンドを演じるのは時系列的にもう少し後だが、大ブレイク手前を思わせる存在感を放っている。監督はで、『シンドラーのリスト』に並ぶ社会派路線だ。

もちろん脚色もあるだろうが、オリンピックでの事件は実際にあった話だそうで、またイスラエル政府による報復も「神の怒り作戦」という実話に基づくものとされている。イスラエル人=ユダヤ人と、パレスチナ人=アラブ人との間に起こっている紛争は根が深く、簡単に語れるものではない。この映画では、いちおうイスラエルの側から描いてはいるものの、もちろんイスラエルの行為は正義などではなく、報復という手段を選択した政府を批判する形を取っている。そして、スピルバーグ自身もユダヤ人である。

関連記事

スーパー8(2011年)

4ヶ月前に母親を事故で亡くした中学生ジョーは、仲間と一緒にホラー映画を撮影している。ある日の

記事を読む

シンドラーのリスト(1993年)

エンターテイメント映画の巨匠スティーヴン・スピルバーグが、第二次大戦中のドイツを舞台とする実

記事を読む

レディ・プレイヤー1(ネタバレあり)

2045年、オハイオ州コロンバス。スラム街のトレーラーハウスで暮らさざるをえない人々の多くは

記事を読む

A.I.(2001年)

近未来。ヘンリーと妻モニカのもとに、少年型ロボットの試作機デイビッドが送られる。ふたりにはマ

記事を読む

リンカーン(2013年)

南北戦争で北軍を率いるリンカーン大統領は、戦争の早期終結のため合衆国憲法の修正案可決を目指す

記事を読む

  • 全て開く | 全て閉じる
PAGE TOP ↑