「帽子いっぱいの空虚(うつろ)」という、辛らつにしてセンス溢れるタイトルにニヤリ。選曲はスタジオテイクが5曲、ライヴテイクが11曲となっていて、既出のシングルを含め初期の代表曲がほとんど詰まったいいとこ取り盤。しかし編集盤にありがちなつぎはぎ感はなく、不思議と筋の通ったひとつの作品として聴けてしまう。ライヴテイクはどれも荒々しく、彼らがライヴバンドでもあったことの片鱗が伺える。

　活動時は、3ヶ月毎という異例のハイペースでシングルをリリース。つまりスミスの魅力は、アルバムだけではその全貌は把握できない。今作は後期のシングル7枚のAB面を中心にして作られたコンピレーションで、『Hatful Of Hollow』とは対を成す作品に当たる。『Panic』『Ask』は後期のライヴでの重要なパートを占め、『London』『Shoplifters 〜』は、後年モリッシーがソロとなってからも歌い続けている。

　メンバーの意図を無視して、アメリカ向けに作られた編集作品(リリースはバンド解散後)。シングルを無造作に並べ立てていて、にしては重要曲がいくつも漏れているという片手落ち状態。しかも半分の12曲が『The World Won't Listen』とダブっているため、作品としての評価は極めて低い。が、裏を返せば、オリジナルアルバム未収録で、今作でしか聴けない曲が多いのもまた事実だ。現在は廃盤。

　版権がラフトレードからワーナーに移り、全オリジナルアルバム再発に先駆けて2種類のベスト盤がリリース。この時期モリッシーとジョニー･マーが一緒にスタジオに入ったという噂も流れ、スミス再結成騒ぎに発展した。『Ι』がキャリア全編に渡って満遍なくセレクトされているのに対し、『Π』は中期〜後期の曲が中心になっている。95年には、1枚もののベスト盤もリリースされている。

　解散後にリリースされた、カップリング違いのシングル2枚を1枚にまとめた日本独自編集のミニアルバム。リミックスや別テイク、ライヴバージョンを収録した貴重盤だが、現在は廃盤。

　『Best...1』と同時にリリースされたミニアルバム。12インチやリミックスの真っ只中にいたスミスの、活動の一旦を垣間見ることができる。しかしバージョン違いを聴き比べるよりは、ここでしか聴けないラスト3曲の方に関心が行く。

　90'sに活躍している若きアーティストたちによる、スミスのトリビュートアルバム。そして『The Queen Is Dead』を、曲順もそのままにカヴァーし配列するというこだわりようだが、原曲に忠実な演奏は少ない。ブ−･ラドリーズやビスは電子音で固め、セラピー？やディヴァイン･コメディは自分の曲のように演奏。個人的にはラストのスーパーグラスに、スミスに対するリスペクトがにじみ出ていると感じている。

　シングルを中心としたクリップ集で、ほとんど唯一と言っていいスミスの映像作品。カメラは当然の如くモリッシーを中心に追う(モリッシーがポケットに花を挿しながら歌うさまも拝める)。スミスはPV作りに積極的ではなかったが為に、アメリカで成功しなかったバンドと言われている。ここに収められた映像も、半数以上がBBCのスタジオライヴだ。デレク･ジャーマンが3曲で監督を務めている。