Jeff Beck 2009.2.11:パシフィコ横浜国立大ホール

開場前のグッズ先行販売を狙い、3時少し前に会場に到着。入場口前には10数人の列ができていたのだが、聞いてみるとこれは当日券の列だった。なので、今度は係員に尋ねてみると、先行販売は反対側からとのこと。パシフィコ横浜は海沿いにあるのだが、通常の入場口は陸側で、海側のガラス張りの入場口の方に行って少し待ち、その後目的とするグッズを無事購入した。





さてライヴだが、定刻より5分ほど遅れて客電が落ち、メンバーが入場してゆっくりとそれぞれの持ち場につく。オープニングは『Beck's Bolero』で、タイトルもあるがこの人のテーマ曲のように思える(ジミー・ペイジが書いた曲だけど)。ジェフ・ベックはゆったりと歩きながらクリーム色のストラトを弾き、曲が中盤に差し掛かるとドラムソロを経て重厚なサウンドバトルになる。続くは『The Pump』『Eternity's Breath』と、『There And Back』からの曲が畳み掛けられる。


ジェフは白を基調とした衣装で、パンツの裾はブーツインだ。バンドメンバーは今回は3人で、最小に近い編成である。ドラマーは、スティングを始め数多くのアーティストとの共演経験を持つヴィニー・カリウタ。キーボードは、Eストリートバンドに在籍したこともあり、エリック・クラプトンのバンドメンバーとして来日したこともあるデヴィッド・サンシャス。そしてベースは、現在22歳の女性タル・ウィルケンフェルドである。


しかし、私のポジションからはタルとデヴィッドの姿はほとんど見えなかった。この日の私の座席は1階席3列目という一見かなり恵まれたところだったが、ステージ向かって右寄り過ぎていた。ステージ上の左右にはスピーカーと思われる機材が設置されていて、これがちょうどタルとデヴィッドを遮る格好になっていたのだ。客席はほとんど皆座っていて、私は一瞬だけ立ってみたのだが、それでも2人の首から上しか見れなかったので、結局座ることにした。ただその代わり、御大ジェフ・ベックのプレイはバッチリと見える。





前半で、早くも名曲『Cause We've Ended as Lovers/哀しみの恋人達』が披露された。しかし、いつもならジェフのギターの独壇場であるところが、今回は少し違った。間奏になるとなんとジェフはギターから手を放し、タルのベースソロにシフトしたのだ。姿はほとんど見えないが、タルが放つ重いリズムは心地よく、場内も彼女のプレイに惹きこまれていて、ここがちょっとした見せ場になった。


がしかし、この辺りから音にノイズが混じるようになってきた。最初は私だけが気になっているのかと思ったら、ジェフ・ベックその人の様子も変わってきた。スタッフを呼び出して耳打ちし、スタッフが調整している間に次の曲・・・かと思いきや、なぜかギターで『Happy Birthday』のリフを弾き、タルもそれに合わせていた(誰かの誕生日だった?)。続くはタルがステージ前方に出てきてベースソロを披露し、するとジェフがタルの後方に回ってフレットを押さえ、二人羽織のような格好でのベースプレイになった。てっきり毎公演でこういう余興めいたことをやっているのかと思ったら、どうやら機材トラブルの場をつなぐためのアドリブだったらしい。


結局機材調整には時間がかかるらしく、ジェフとメンバーはいったんステージを後に。客電は消えたままだが、ボブ・ディランの曲がBGMとして流れ、その間スタッフがギターを鳴らすなどしていた。約5分後、メンバーが生還。ジェフはMCでトラブルを詫びるようなことを言い、拝むように両手を合わせながら何度もぺこぺこしていた。こういうジェフの姿が見られたのも、ある意味貴重かも。そして演奏を再開したのだが、どうやらトラブルは解消されたようだ。





ジェフのプレイぶりだが、時には荒っぽく、また時には緻密で、と、大きく2つのアプローチがあったように見えた。この人はピックを使わず指で弾くのだが、ライヴ中ギターはクリーム色のボディのストラト1本だけで通し、ギターを替えることはなかった。曲間にチューニングすることもなく、それでいて生々しいリフから電子的なリフからを弾き分けていて、それはまるで魔法のようだった。曲毎にギターを交換し、1回のライヴで5~6本を使うギタリストが今や当たり前なのに。アーミングを多用していたのも、少し意外だった。


『Led Boots』は、以前の公演では腕を振り上げて客を煽るアクションをしたこともあったのだが、今回は割と淡々と弾いていた。エスニックなイントロで始まり、テクノ調のリフとデヴィッドの鍵盤の音色とのコンビネーションが絶妙な『Nadia』は、近年のライヴでは欠かせないナンバーになっているようだ。『Goodbye Pork Pie Hat』から『Brush With The Blues』へのメドレーも今やお馴染みだ。ステージ上にはほとんど装飾もなく、上部のライトが曲間に揺れるように前後に動いていたくらいだった。


『Blue Wind』のイントロは、公演がラスト近くになったことを知らせてくれる狼煙のようだった。そして本編ラストは、ビートルズの『A Day In The Life』だった。この曲がこの人のライヴで披露されるのも特に珍しいことではないが、ヴォーカルのないインストライヴでここまで華やかにそしてここまでカッコよく見せられる人は、この人くらいのものだと思う。





アンコール、まずはジェフとデヴィッドの2人だけがステージに登場し、『Where Were You』を。次いでタルとカリウタも加わって『Big Block』を演奏。コレは、99年来日時のアンコールと同じで、これでライヴも終わりかなと思った。しかしライヴはまだ終わらず、更にセッション風に2曲が繰り広げられた。聴いたことのあるようなないような曲だったが、後で調べてみて『Scottish One』『Peter Gunn Theme』という曲だとわかった。「ピーター・ガン」はアメリカの探偵ドラマで、後者はそのテーマ曲だったようだ。





現在65歳。見た目こそ以前と変わらず若々しいが、近年はオリジナル作のリリースもなく、出るのはライヴアルバムばかり。さすがに、この人も年齢なりの活動にシフトしつつあるのかなと思った。ただその一方で、バンドメンバーは固定せずツアー毎にチェンジし、今回はビジュアル面も含めタルの存在がかなりのポイントになっている。公演中、ジェフが全くギターを弾かずタルやデヴィッドに演奏を委ねる場面が何度かあって、メンバーから刺激を受けることで自らを活性化させているようにも見えた。そして、同時期に来日しているエリック・クラプトンとのジョイント公演も実現。フェスやイベントでの共演はあるが、2人名義での公演は、世界初らしい。




(2009.2.15.)

















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