Eric Clapton 2001.12.15:横浜アリーナ

来日公演最終日ということもあり、グッズの大半は品切れになっていた。4種類あるTシャツも残っているのは1つしかなく、しかもLサイズのみ。クラプトンについては来日するたび必ずTシャツを買っていた私だが、こうした状況から今回買ったのはプログラムのみ。だけど不思議と悔しい気持ちにはならなかった。むしろ、これだけ多くのファンに支持され愛されているのだと、嬉しくなったくらいだ。





 5時5分過ぎに客電が落ち、クラプトンがひとりだけでステージ向かって右の袖の方から登場。ピンスポットを浴びる中きちっと礼をし、フロントに用意された椅子に座る。そのままひとりだけでライヴがスタート。曲は『Keys To The Highway』。初出はデレク&ドミノスのときなのだが、ここではアコースティックで、2000年に発表されたB.B.キングとの共演アルバム『Riding With The King』のバージョンに近い。


 続くインストの『Reptile』で他のメンバーが登場。クラプトンの右にはベースのネーサン・イースト、左にはアンディ・フェアウェザー・ロウ、後方にはドラムのスティーヴ・ガッドというお馴染みの面々。今回は2人の女性コーラスの姿はなく、その代わりなのかキーボードが2人いて、両脇に陣取っている。クラプトンは黒っぽいシャツのラフないでたち。ネーサン・イーストはスカイブルーに白のパンツ姿で、ちょっと眩しく見える。


 こうして序盤はアコースティックセットが続く。・・・のだが、最終ということもあってなのだろうか、ヴォーカルにかなり力が入り、それが説得力を帯びているように思えた。左足でリズムを取りながらギターをかきならすその姿には、アコースティックを地味さや渋さといったところだけに留めておかない、攻めの姿勢が感じられた。正直、ちょっとびっくり。個人的には90年のジャーニーマンツアー以来毎回の来日を1回ずつ観ていて、つまりは今回が7回目のクラプトンとなる。さすがに醒めた目でライヴを観てしまうのではという不安が自分の中にあったのだが、クラプトンはその上を行っていた。すっかり聴き慣れたはずの『Tears In Heaven』やアコギ版『Layla』も、シンプルでポップでありながら、若干ハードに感じられた。





 続いてはエレクトリックのセットにチェンジ。ここでクラプトンが手にするは、今やトレードマークとなりつつあるブラッキー・・・ではなかった!オペラグラス越しに見ると、赤や緑といった複数の色でデザインされた、レインボー柄?のギターだ(結局エレクトリックではギターを交換することなく、これ1本で弾き切っていた)。『My Father's Eyes』や『River Of Tears』、『Going Down Slow』といった98年作『Pilgrim』からの曲が続く。アコースティックでは歌が前面に出ていたのに対し、今度はギターをガンガンに弾きまくる。マイクスタンドはほぼ中央にあって、歌うときは当然そこに立つのだが、ギターソロのときはその場を離れ、向かって左手前に前進して暴れ放題だ。


 ステージセットはいたってシンプルだが、鉄骨のアーチが3段に連なっていて、セッティングされた多くのライトが、曲によりびかびかと閃光してステージを彩る。バックは開いた傘を上から見たようなデザインの模様が並び(なんて例えだ/汗)、これも曲によりブルーやイエローのライトが当てられて雪の結晶を思わせる模様が映される。ステージの外側両脇には、アルバム『Reptile』で使われた"ERIC CLAPTON"のロゴが書かれた幕が吊るされていた。





 クラプトンが70's前半にドラッグに溺れて自宅にこもり、アーティストとしての活動がほとんどできなかったのは周知の事実だが、そこから立ち直ってから現在に至るまでは、ほとんど休むことなく活動している。コンスタントにアルバムをリリースし、ツアーに出る。それだけではなく他のアーティストの作品にも参加はするわ、ベネフィットコンサートには参加するわ、映画のために曲を提供するわで、物凄い仕事量だ。


 そして来日公演は、長期に渡ってほぼ全国を回る。今回も11月19日の大阪に始まり、この日の最終までなんと16回の公演回数を数えている。つまりは約1ヶ月日本に滞在し、ほぼ2日に1回のペースでライヴをやっていることになる。東京圏では、武道館や横浜アリーナといったキャパ1万クラスの会場で計10回。ドームでやってしまえばこんなに回数を重ねなくてもよさそうなものだが、しかしそれをしないクラプトンという人は、ツアーをすること、ファンの前に立つことが好きで好きで仕方がない人なのではないだろうか。そうとでも考えなければ、このペースは異常すぎる。





 『Badge』では、やはり先日亡くなられたジョージ・ハリスンさんのことを思い出さずにはいられなかった。私が唯一観たナマのハリスンさんは奇しくもこの横浜アリーナで、10年前のことだった。そのライヴでは中盤にクラプトン単独のコーナーがあって、『Badge』は演奏されていた。この曲は途中無音になる箇所があって、ライヴでは溜めに溜めた末にクラプトンのギターが沈黙を打ち破るというスタイルで演奏されることが多いのだが、今回はその溜めがほとんどなく、実にあっさりと沈黙が破られた。まるで場内がウェットな気分に包まれるのを、回避しているかのようだった。


 場内はここまでほとんどのオーディエンスが座ってライヴを楽しんでいたのだが、それは『Cocaine』のイントロで突き崩された。センター席は雪崩のように皆立ち上がり、サビを合唱する。そして『Wonderful Tonight』へ。この曲、今までなら女性コーラスの美しい声が終盤をドラマチックに飾っていたのだが、今回はその女性コーラスはいない。ではいったいどうなるのかと思いながら観ていると、向かって右に陣取るキーボードのソロがフィーチャーされた形になった。プログラムによると、この人はE・ストリートバンドに在籍していたこともあるデヴィッド・サンシャスという人で、ここではキーボードでこんな音が出せるのかというような、管楽器に近い音を出して曲を締めくくった。


 デヴィッドの快進撃は続いた。本編ラストのエレクトリック版『Layla』では、序盤はギターを手にしてクラプトン~アンディとトリプルギター競演。ものおじすることなく、かなり好き勝手に弾いていたのが新鮮だった。しかしサビではきっちりとデュアン・オールマン役を務めてスライドギターを爆発。後半のピアノ部になるとギターを手放してまたキーボードに戻っていて、慌しくもかなりおいしい役どころだったように思う。





 アンコール、まずはお馴染み『Sunshine Of Your Love』。アンディ~ネーサンとヴォーカルをつなぐのも今やお馴染みの光景だ。そしてラストは再びアコースティック。まずはクラプトンがぽろろん♪とギターを弾きながらメンバーを紹介。曲は誰もが1度は耳にしたことがあるであろう、オズの魔法使いの『Somewhere Over The Rainbow』だ。最後はメンバー全員で肩を組みながら礼。去り際にネーサン・イーストが「マタ アイマショウ!」と言うのもいつものことだ。














 クラプトンに対して、今更「上手い」「さすが」などという賛辞は陳腐すぎる気もするが、私にとってはそういうことばが自然と口から出てくるような、安心感のあるライヴだった。大規模なワールドツアーは今回が最後との噂もあるが、しかしそうは言ってもツアー好きで増してや親日家でもあるクラプトンのこと。先ほどのネーサンのことばではないが、また会えるのはそう遠くないことだと思っている。




(2001.12.16.)































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