The Cornelius Group 2007.4.5:Shibuya-AX

季節は4月だが、外は冷たい風が吹いていて結構肌寒かった。会場近辺にはさくらの木があって、まだ散らずにきれいに咲いていた。NHKのスタッフが撮影をしていたが、後で特番として放送されるのかな?やがて開場時間となり、フロアに行ってみると、ステージは白い幕で覆われていた。その幕には赤、白、黄色、青・・・、つまりは『Sensuous』のジャケットと同じカラーが、縦長の四角形でランダムに点灯していた。クラシック映画に使われているような渋い音楽がBGMとして流れ、場内にはまったりムードが漂っていた。





 予定を5分ほど過ぎたところで、客電が落ちた。白い幕にはメンバーのシルエットが映し出され、ギター、ベース、キーボード、ドラム、それぞれの音が断片的に発せられ、それらがやがてシンクロし、セッションへとシフトチェンジ。次に『さくら』や森進一の『おふくろさん』、スーパーマリオの効果音などがギターのリフで発せられ、場内の興奮度が上昇していく。やがてメンバーがひとりずつ順繰りに「こ」「ん」「ば」「ん」「わ」と発し、幕には東京タワーをバックにして文字が一字ずつ浮かび上がる。更に、「The Cornelius Group」~「Sensuous」~「Synchronized Show」の文字が浮かび、ここで幕がストンと落ちて、ステージがオープンになった。


 オープニングは『Breezin'』。メンバーはほぼ横一線に並んでいて、その配置は向かって右からベースの清水ひろたか、ドラムのあらきゆうこ、ギター&ヴォーカルの小山田圭吾、キーボードの堀江博久という具合。小山田はかなり低い位置でギターを弾いていて、その動きも淡々としている。後方にはライトがいくつか設置され、またバックドロップには大きなスクリーンがあり、曲に合わせて映像が流される。続くは『Wataridori』で、堀江が何重にもなっている鍵盤を操り、電子音をベースにした音色が場内に心地よく響く。そしてテレビのCMでもよく流れていた、リフが印象的な『Gum』となり、ここで堀江はギターに持ち替えて小山田とのツインになった。





 お次が『Smoke』で、個人的に期待していた『Point』からの曲が、ついに披露された。それまでコーネリアスの曲とまともに向き合うことのなかった私が、初めてその存在を強く意識したのが『Point』だった。このときのライヴを2002年のフジロックで観たのだが、音と映像が見事にシンクロし、それが夜の野外という神秘的な空間とマッチして、非常に精度の高いステージになっていたのだ。『Point』リリースから6年、フジのライヴからは5年、しかしこれらの曲は少しも古びることなく、それどころか今現在でも最先端の音として機能している。更に、曲は『Tone Twilight Zone』~『Drop』と披露され、『Point』ワールドの固め打ちとなった。


 『Point』を象徴するナンバーと言ってもいい『Point Of View Point』へ。小山田が弾くセミアコのシンプルな音色、それにあらきゆうこのシンバルの音が心地よく響き渡る。コーラスワークも見事で、人力による精密な音の構築が素晴らしい。そしてこの曲と言えば、もうひとつの醍醐味なのがバックに流れる映像だ。カメラアングルが首都高速を走るクルマの視点で進み、他のクルマの流れが早回しで捉えられている。日中だったのがやがて日没となり、首都高を疾走するクルマも、ヘッドライトが線状に伸びた光の帯の渦のように変貌していった。





 『Point』からの透明感溢れる曲が続き、観ている方も夢見心地になっていた。そこへ今度は、ロックチューンの『Count Five Or Six』だ。「One♪」「Two♪」「Three♪」「Four♪」「Five♪」「Six♪」が連呼され、スクリーンにも英字や数字が羅列される。小山田は大きなアクションでギターをかきむしり、ライトハンド奏法やアーミングを駆使して、ハードな音を発している。そして注目の『Brand New Season』だが、曲の途中で小山田はフロア前方に詰めている客の中からひとりの男性を抽出し、ステージに上げた。コーネリアスのライヴでは恒例のことだが、小山田は彼の手を取ってテルミンにかざし始めたのだ。


 曲はエルヴィス・プレスリーの『Love Me Tender』で、ほとんど手の動きや向きは変えていないように見えたのだが、それでもちゃんとメロディーになっていた。テルミンて、不思議な楽器だよな。弾き終えたところで男性は小山田とがっちり握手を交わし、清水にはレイをかけられてステージを後にしていた。そして再び演奏に戻るのだが、このときスクリーンに流れていたのは、もしかするとエルヴィス・プレスリーの映画のワンシーンではなかったのかと思う。ひとりだけ終始顔面がマスキングされ続けている人がいたのだが、その人こそエルヴィス本人だったのでは?・・・いや、あくまで想像だけど。


 疾走感に溢れる『Star Fruits Surf Rider』もありはしたが、終盤は『Sensuous』からの固め打ちになった。特にユニークだったのが『Fit Song』で、細切れに発せられるヴォーカルに、スクリーンの映像がシンクロしていた。角砂糖がころころと転がりながら進んで行くのだが、小山田が歌を入れるそのタイミングで必ずアクションがあり、観ていて感心するやら和むやら唸らされるやらだった。4人全員の前にはツリーチャイムがあって、メンバーそれぞれがライヴ中何度となくこれをかき鳴らし、しゃらり~ん♪という涼しげな音色を発していた。堀江が鍵盤やギターだけでなく、弓で何かを弾いていたのも印象的だった。





 本編ラストをタイトル曲『Sensuous』で締めたが、すぐさまアンコールに。まずは、4人がオーディエンスをバックにする形で記念撮影。そして演奏になるのだが、『さくら』などいくつかの曲がワンフレーズだけ弾かれた後に『E』へ。そしてオーラスは『Sleep Warm』で、小山田は黒いボックスをフロアに向け、オーディエンスがそれに手を近づけると電子音が発せられた。やがてそのボックスをオーディエンスに預けてしまい、自らはステージに立ち戻った。小山田の手元にはDVJもあったらしく、カメラがオーディエンスを捉えたときにスクラッチし、スクリーンに映るオーディエンスが引き伸ばされたり歪められたりした。


 演奏が終わり、4人は前方に横一列に並んで挨拶してステージを後にした。場内からは少しの間拍手が挙がっていたが、程なくしてスクリーンが稼動。場内は、一転して静まり返った。スクリーンには、赤、白、黄色、青のしずくが絵の具のような粘り気を漂わせながら飛び交い、それらは最終的に上の方から垂れるように流れ出す格好になり、やがて『Sensuous』のジャケットになった。その後「thank you」~「and」~「good night」~「from」~「Nakameguro」~「to」~「everywhere」というメッセージが浮かび上がり、ゆっくりと客電がついた。





 この日の公演は、約1ヶ月に渡って行われたツアーの終盤に当たっていた。国内ツアー終了後、バンドは海外ツアーへと繰り出し、4月末にはアメリカのコーチェラフェスティバルに出演することも決まっている。コーネリアスの音楽は海外でも充分通用すると思うし、小山田は既に数々のアーティストのリミックスを手掛けてもいるので、向こうでも高い評価を得られるに違いない。そしてその後は、サマーフェスティバルのような場でまた彼らのライヴを観ることができるかなという、期待もしてしまう。





(2007.4.8.)


















Copyright©Flowers Of Romance, All Rights Reserved.