Sketch Show + 雲龍 2005.12.20:森美術館 特設能舞台

 面白いことに、スケッチ・ショウのライヴはここ3年ほどコンスタントに観ている。去年はガーデンホールでのスタンダードなスタイルのライヴを観たし、おととしは青山Cayでのオールナイトで行われたクラブイベントを観た。今回は1回限りのスペシャルライヴで、雲龍という笛奏者とのコラボレーションだ。





 会場は、六本木ヒルズ内の森美術館で、まずはエレベーターで52階まで上がる。美術館はひとつ上の53階にあるのだが、その直前のエスカレーター前に列ができていて、そこに並んで開場時間になるのを待った。やがて、10人くらいずつ区切って入場が始まり、少しして私も入場。チケットにスタンプを押してもらってエスカレーターで上がり、係員の人の案内に従ってゆっくりと館内を歩く。しかし途中の廊下でまた待たされ、15分くらいしてやっとステージのあるフロアに入ることができた。


 ステージは特設能舞台で、木材でできた高台が逆L字型に配置されている。客席は300くらいあり、私は端っこの方ながら運良く最前列の席につくことができた。端っこでもステージは充分近く、これだけでも私にとってはスペシャルだ。ステージ上は横長の卓があってその上にiBookや電子機材などが並べられていて、後方には細長いスピーカーが2つ立ち並んでいる。場内にはやたらとビデオカメラが設置されていて、もしかしたらこのライヴはDVD化でもされるのだろうか。





 こうして、いつものライヴとはまるで異なる独特の緊張感が漂う中で時間が過ぎ去り、予定時間から10分近く経過したところでゆっくりと客電が落ちた。果たしてどこから登場するのだろうときょろきょろしていると、私たちが入ってきたのと同じフロア後方の廊下からゆっくりと歩いて登場。細野晴臣と高橋幸宏が卓の前に座り、雲龍は2人から少し離れたところに陣取った。


 早速演奏がスタートし、細野はiBookを、幸宏は電子機材や木琴などを操っている。マイクは見当たらなかったので、インストオンリーになることは予測できていて、心地よい電子音が場内に響き渡る。2人は黒を基調としたシックないでたち。素敵な年の取り方をしている人たちだ。一方の雲龍は白い衣装をまとっていて、静かに座りながらもその視線は2人をじっと捉えていて、堂々たるたたずまいだ。


 1曲目が終わり、すると今度は雲龍が笛を吹き始めた。それに合わせるようにスケッチ・ショウの演奏も始まり、これらが相俟って不思議な音の空間が作り出される。実は2人の卓の前にあるのはiBookや電子機材ばかりではなく、和太鼓や鈴といった「和」の楽器もあって、2人は巧みにこれらを操っている。電子音と和楽器のコラボレートを、たったの3人でやってのけてしまっているのだ。





 曲と曲との切れ目は、あるようなないような微妙な感じだ。客の立場としては、拍手をしていいものかそれともしない方がいいのかという、妙な緊張感を強いられる。結局ライヴ中に拍手が起こることはなく、わずかな間だけを置いて演奏が淡々と続けられた。雲龍は曲により笛を使い分け、あるときは縦笛、あるときは横笛、オカリナのような小さな笛も使っていたと思う。音響面は、スケッチ・ショウの2人の後方にある2つの細長いスピーカーだけが担っているのだが、この空間においてはこれで充分行き渡っている。


 曲は聴いたことのない曲ばかりで、恐らくはほとんどが未発表曲なのだろう。環境音楽的ながら、電子音独特のひんやりとした感じは薄く、むしろ人間的な温かみを感じてしまう。それにクロスする、雲龍の笛や和楽器の音色の数々。眠気を誘うような不思議な魔力が漂い、目の前のライヴが現実に起こっているものなのかさえわからなくなってくる(半分寝ている?)。こんなライヴが約50分ほど続き、細野も幸宏も結局ひと言も発することなく、最後に礼をしてゆっくりと退場した。





 私たちが考えている以上に、スケッチ・ショウのスタイルは、そしてスケッチ・ショウの2人が考え目指していることは、自由でフレキシブルなのではないだろうか。若きアーティストとのコラボレートもすれば、今回のような和楽器をふんだんに取り入れたライヴもするし、もちろんオーソドックスなバンドスタイルもある。とすれば、今後もまた彼らは意欲的に作品を生み出したりやライヴをやってくれたりするだろうし、ファンの身としては期待してもいいと思う。





(2005.12.26.)



















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